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はしか(麻しん)について

初稿 平成19年5月29日
最終稿 平成19年5月29日
坂下厚生総合病院ICT 江川雅巳


 現在、全国的に ”はしか(麻しん)” が流行しています。

 東京では4月から猛威をふるい、企業、飲食店をはじめ、学校が次々と休講〜閉鎖しています。
 福島県でも22日の学法福島高を皮切りに、一時閉鎖する学校が続いています。

 会津地区では、5月第2週にはしかが発生(幼児2名、中学生1名、高校生1名)しました。2年10か月ぶりとの事です。
(会津若松医師会学校医・園医委員会・会津若松医師会小児科委員会の調べによる感染症サーベイランス情報から。)
(福島県衛生研究所感染症情報センター該当資料をご覧になれます。)

 その後、ある部活動に参加した高校生の間などで、はしかが流行しています。
 当院でも5月28日の段階で、はしかの高校生5名を診療しました。

 麻疹は14才以下で保健所への届け出が必要ですが、高校生以上の「成人麻しん」では発生状況の把握が困難です。
 全国の医師たちが協力して麻疹発生データベースを作成しており、当院も協力していますので、参考にしてください。

 

 はしか流行は今後も続くと予想されますので、以下の方は注意してください。

1. はしか(麻しん)にかかった事がはっきりせず、麻しんの予防接種を受けた事もない人。
2. 麻しんの予防接種を受けたが、1回だけの人。

 なお、血液検査ではしかへの抵抗力(麻疹抗体価)を調べる事ができます。
費用は約5千円ですが、全国的な麻疹大流行により、結果が分かるまでかなり日数を要する状況となっています。

 

 はしかの治療には特効薬がなく、強い症状が続いたり重い合併症を伴う事もあるため、予防が大切です。

一般的な予防

発熱、咳のある人は、なるべく出歩かず、人前ではマスクを着用する。
締め切った部屋では、時々換気する。

予防接種

 麻しんワクチン(約5千円)、麻しん風しんワクチン(約1万円)のいずれかで予防できます。
 全国的に品薄ですが、高校〜大学低学年の青年は、なるべく接種した方が安全です。
 ワクチン接種に際しては、副作用や妊娠への注意を説明されますが、勇気を出して接種を受けましょう。
 (当院で打てる「ミールビック」の副作用はこちらでご覧になれます。)

 もよりの医療機関にワクチンの在庫がない場合は、他の医療機関へ問い合わせるか、次回入荷時の予約をする方法が考えられます。


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以下、はしか(麻しん)についての詳しい説明

はしかとは

 麻しんウイルスによる感染症で、高熱や典型的な発疹をともないます。

 感染力が強く、空気感染、飛沫感染、接触感染のいずれも起こします。
 (Basic Reproductive Number : 1人の患者からうつされた新規患者数)は約20(人)です。

 麻しんウイルスには亜型があり、「H1型」は特に流行し易いと言われています。

 

はしかの症状

 潜伏期は通常1〜2週間で、以下の症状を呈します。

1. カタル期(2〜4日)

 38℃前後の発熱、咳、鼻汁、くしゃみ、結膜充血、眼脂、羞明などを発症します。
この時期は、一般の風邪と区別できません。

 熱が下降する頃、口の中でほっぺたの内側(頬粘膜)にコプリック斑という発疹が出現します。

2. 発疹期(3〜4日)

 一旦下降した発熱が再び上昇(39〜40℃)し、麻しん特有の発疹(小鮮紅色斑が暗紅色丘疹、それらが融合し網目状になる))が出現します。
発疹は耳後部、頚部、顔、体幹、上肢、下肢の順に広がります。

3. 回復期(7〜9日)

 解熱し、発疹は色素沈着を残して消退します。この際、痒みが強くなる事もあります。 

備考

 成人がはしかにかかると重症化し易いと言われています。
 稀に、肺炎、中耳炎、クループ、心筋炎、脳炎、痙攣、消化管出血などを合併し、命に関わります。

 妊娠初中期(24週未満)の妊婦が麻疹を発病すると、突発的に子宮が収縮し流死産に至るなどの危険性が報告されています。

 また、数年から十数年以上経過後にSSPE(亜急性硬化性全脳炎)を発症する事も知られています。

 

はしかの予防

1. ワクチン

 はしかを発症した場合、特効薬はありません。
ワクチンによる発症予防が重要であり、天然痘同様に撲滅可能な疾患と考えられています。

 わが国では1969年に弱毒生ワクチンの任意接種が始まり、発足当初の接種率は30%程度でしたが、1978年から定期接種となり接種率が60〜70%となりました。

 1990年頃には3種混合ワクチン(MMR;麻疹/風疹/おたふくかぜ)が増加しましたが、含有物によると思われる副作用が問題となり、MMRは1993年に廃止されました。
 この時期、ドタバタ騒ぎの中で定期予防接種の年齢だった世代ではワクチン接種率が若干低下し、特に現在17才の年代では90%を割っています。

 また、MMR接種の多かった世代は現在17〜19才の年代ですが、ワクチンメーカーによっては品質がイマイチ(Primary Vaccine Failure)だった可能性も否定できません(茨城県保健福祉部の資料)。

 ところで、ワクチンで得られた免疫は、ワクチン麻しんウイルスの刺激(ブースター効果)がないと、年々低下します。(SVF:Secondary Vaccine Failure)。
近年、わが国では麻疹の大流行がありませんでしたので、ワクチン接種が1才頃の1回だけだった方は、抵抗力がかなり落ちている可能性があります。
 ですから、35才以下ではしかへの抵抗力が心配な方、絶対かかりたくない方は、ワクチンを再接種する事が勧められます。

 現在のワクチンは弱毒化したウイルスであり、接種されると体内でゆっくり増殖します。
ほとんどの方は無症状で、免疫反応により駆除してしまいますが、中には微熱、発疹、リンパ節腫脹を発症する方もいます。
この場合でも、大抵は直ぐに治ってしまいます。
本当に極めて稀(百万人に一人以下)に、脳炎を発症するとされていますが、ワクチン接種を受けずにはしかにかかってしまった場合の命の危険と比べれば微々たるものと言えます。

 妊娠初期の妊婦では、児にとって安全という根拠がないため、接種する事はできません。
ただし、催奇形性も証明されていませんから、ワクチン接種後に妊娠が分かっても、中絶の必要はありません。
 なお、ワクチン接種後1ヶ月は避妊する必要があります。

2. 一般的予防

 はしかに限った事ではありませんが、外出時にマスクを携帯し、せきをしている人や風邪気味の人と接する時はマスクを着用しましょう。
 帰宅したら、うがい・手洗いを心がけましょう。

 

麻疹の治療

 特効薬はなく、水分補給と冷却、せき止めや熱下げの服用など、対症療法を行いながら、大きな合併症が出ていないか注意しましょう。

 不安な時は、医療機関を受診しますが、他の患者さんや職員に感染させない様に配慮してください。

 

医療機関における対応

 厚生労働省国立感染症研究所感染症情報センターの以下の資料が参考になります。

 1. 医療機関での麻疹の対応について
 2. 保育園・幼稚園・学校等での麻しん患者発生時の対応マニュアル

 上記資料などを参考にした要点と、当院の対応はこちら

 

参考

 厚生労働省国立感染症研究所感染症情報センター

 たからぎ医院(小児科)院長:宝樹真理先生のブログ

 Chiba ME, et.al. Measles infection in pregnancy. J Infect. 2003 Jul;47(1):40-4.


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