以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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Dr.メッセージ

あなたは胃がんになり易い?
2011年10月
福島県農協会館診療所
所長 伊勢 重男

福島県農協会館診療所 所長 伊勢 重男
 最近胃がんに罹る人が減ってきて、死亡率原因の主役の座を肺がんに譲るようになったとはいえ、まだまだ日本人の癌に大きな割合を占めていることは間違いありません。
 ところで、胃がんの原因として「ヘリコバクター・ピロリ」という細菌が大きく関与していることを御存じでしょうか。しかも日本人の60歳以上の中高年者のうち、60?70%が胃の中にピロリ菌を持っているといいますから驚きです。20歳代の人は約20%位の保有率といわれています。この差は戦前、終戦直後の比較的非衛生的な生活環境にあった世代と衛生的に育った世代との差ではないかと見られています。しかも60歳以上と言えばがん年齢です。
 ピロリ菌は強い胃酸の中でも生き続ける特殊な菌で、胃十二指腸潰瘍をもたらす病原性を持っています。しかしなんといっても問題になるのは、この菌が胃がんになり易い「慢性委縮性胃炎」を引き起こす原因ともなり、ひいてはその30%が胃がんになるという事実です。国際ガン研究機関(IARC)の発がんリスクでは「発がん性の強いグループ1」に分類しています。最近種々の研究から、ピロリ菌と強度の委縮性胃炎の両者を同時に有する人は胃がんになる確率が高いことが判明しています。
 胃炎の粘膜委縮度は、血液中の「ペプシノーゲン」という酵素を測ることで分かります。またピロリ菌を持っているかどうかは血液中のピロリ菌抗体を検出することで判明します。
 すでにいくつかの自治体では、通常の胃がん検診に先立ち「ペプシノーゲン・ピロリ菌検査」を振り分け検査として行っているところがあります。
 この「両者とも陽性」の方は将来胃がんになる恐れが強いのですから、胃がんの早期発見のため「毎年必ず胃内視鏡検査を受ける」よう日本ピロリ菌学会では強く勧めています。
 「ペプシノーゲン、ピロリ菌ともに陰性」なら通常の年一回の胃がん検診を受けるだけでよいとし、「ペプシノーゲン陰性でピロリ菌陽性」なら2?3年に一度は内視鏡検査(胃カメラ)を受けるのが望ましいとしている市町村が多い ようです。
 これらの検査は血液で比較的簡単にできますが、現在のところ費用は自己負担となっています。しかし自分の健康を守るため一度は受けてみては如何でしょうか。またピロリ菌陽性の方は自己負担でも除菌をお奨めします。(注;胃潰瘍、十二指腸潰瘍治療中なら健康保険で除菌できます。)