以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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Dr.メッセージ

体にやさしいサウナとは
2012年5月
福島県農協会館診療所
所長 伊勢 重男

福島県農協会館診療所 所長 伊勢 重男
 以前この欄で、体にやさしい温泉ないしはお風呂の入り方について紹介したことがあります。その要点は次の通りでした。
 1)中高年者は比較的熱めの風呂を好みますが、これは健康的に望ましいことではありません。なぜなら急に高温の風呂に入ると、交感神経が興奮し血圧の上昇を見るからです。高齢者には特にこの傾向が強いので要注意です。
 2)血圧の高い人、心臓病や動脈硬化性疾患など循環器系に障害を有する人は肩まで全部浸からないで、乳首からみぞおち位までの半身浴とすること。何故なら全身浴では大きな水圧が体全体に掛かって心臓に大きな負担が生ずるためです。
 入浴は気持ちが良くなる健康法の一つですが、もう一つ気持ちが良くなる健康法として「サウナ」を好む人も多いようです。ただし、サウナは室温80度から90度という高温のため厳しい環境下にあり、体調の悪い人には勧められません。循環器系の病気を持っている方は要注意、特に重い心不全を患っている方には禁忌です。このような患者さんが入浴あるいはサウナ浴をする場合はしっかりした医学的管理のもとで行われなくてはなりません。
 ところが、サウナを利用して重篤な心不全のような患者さんの治療を行うという新しい方法が開発されました。開発者の鹿児島大学鄭(てい)教授はこれを「和温療法」と名付けられました。
 この方法は昨年NHKの「ためしてガッテン」でも紹介されました。今年の日本循環器学会でも特別なセッションが催されて大きな反響を呼んだそうです。
 「和温療法」とは普通のサウナと違って低温のサウナです。ここに入ってゆっくりと全身を温め、深部の体温を約1度上げる療法です。
 一般のサウナでは室温が80度以上に保たれていますが、「温和療法」では室温を60度に保った「低温乾式」のサウナに15分入り、全身が暖まったところで室外に出ます。この時はまだ深部体温は上昇していません。ここで常温ですぐに30分間毛布か布団などで体を包んで安静にしておきます。
 布団や毛布で保温を保つことで次第に体の深部温度が約一度上昇するといいます(和温効果)。そうすると副交感神経が働き始め、全身の血管が拡張し、これに伴って特に心臓の血管も拡張するので、循環器系によい影響が現れるという訳です。
 この治療方法はまだ始まったばかりで、一般に普及しているとは言えませんが、患者さんにやさしい治療法として注目を浴びています。和温療法が一般家庭においては「ぬるめのお風呂に長めに入る」という健康法を証明するものとして紹介致しました。「ぬるめの長風呂」をぜひ実践してみて下さい。