以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
JA福島厚生連からの最新の情報は、TOPページからご覧ください。



農家の皆さんへ

避難生活における足のむくみにご注意ください
2011年4月
福島県農協会館診療所
所長 伊勢 重男

 この度の大震災で被災し、避難生活を送られている皆様には心からお見舞い申し上げます。
 福島県厚生連は、浜通り地方に双葉厚生病院および鹿島厚生病院という二つの病院を運営しておりますが、いずれの病院も今回の大震災で県内各地の厚生病院へ避難を余儀なくされております。

 また入院患者さんや介護施設に入所している方々のみならず、浜通りで生活していた一般の組合員の皆さんも多数県内各地に避難され、不自由な生活を送られていることと思います。

 今回の災難では、非常に広範囲な被災者が一度に生じた関係で、多数の被災者の方々が、とるものも取り敢えず各地の避難所に殺到したというところではないでしょうか。テレビ、新聞などの報道によると、避難所は公民館,体育館などが大部分のようです。このような場所に大勢の方々が、一人当たりとても狭い面積で生活している、というよりは寝起きしているだけという状況でしょう。

 このような場面をみますと、私は自分の経験を通して予想されるある身体障害を連想してしまいます。それは海外旅行者がかかり易いとされる「エコノミークラス症候群」という病気です。

 飛行機のエコノミークラスの狭い座席に長時間、座らされている姿勢を取っていますと、腰から下の血の戻りが悪くなり、停滞する結果特に足の付け根付近にある深くて太い静脈に血の塊(これを血栓といいますが)出来やすくなります。医学的には「深部静脈血栓症」といい、太もも,ふくらはぎが浮腫んできます。

 実は私は、2年前夏の暑い時期に、長時間水も飲まずにドライブしたことがあったのですが、気がついたら運転には全く使わない左足から太ももにかけてパンパンに張れ上がっていました。まるで象の足のようで、ビックリしました。
 これはまさに「深部静脈血栓症」の症状そのものでした。急いで治療を受けましたので、何事もなく回復しましたが、もしこの血の塊(血栓)が剥がれて血液の流れに乗って肺に達していたら肺の動脈を塞いでしまうことになります。そうなったなら胸が苦しくなったり、痛くなったりして大変だったでしょう。

 エコノミークラス症候群は、飛行機の中だけで起こるとは限りません。最近の事例では、新潟県中越地震で多くの人が罹かったので、有名になりました。特に自家用車に長期間寝泊りしていた被災者方々に多かったそうです。
 今回の災害でも、止む無く避難所の狭いところでジッとしていなければならない状況の方々も多いことと思います。これからエコノミークラス症候群になる可能性のある方が増えるかもしれません。

 では、これを予防する方法があるでしょうか。あります。簡単な予防法があります。その方法を2,3ご紹介しましょう。

 まず、仰向けに寝て下さい。そして足を真っ直ぐに伸ばし、片方の足全体を軽く持ち上げます。この姿勢で足首を伸ばしたり、手前に縮めたりする運動を30秒くらい続けます。反対側も同じように行います。どうですか。意外と簡単でしょう?これをできれば1時間に1回くらい実行すれば理想的です。
 別のもう一つ予防法は、足の運動そのものを行うことです。できれば避難所の端から端端まで何回か往復してみましょう。これを実行すれば運動不足もある程度解消されることになり、一石二鳥ではないでしょうか。

 以上避難生活に起きやすいエコノミークラス症候群の予防について申し上げました。皆様のご健康をお祈り申し上げます。