以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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農家の皆さんへ

子宮がんについて
2011年9月16日放送
白河厚生総合病院
産婦人科病棟 辺見 文恵

 おはようございます。白河厚生総合病院産婦人科に勤務しております、辺見です。今朝は子宮がんについてお話しをしたいと思います。特に子宮がん検診の必要性と2年前から接種可能になりました、子宮頚がん予防ワクチンについてお話したいと思います。
 子宮がんには子宮の入り口部分の頚部にできる「子宮頚がん」と、子宮の奥の体部にできる「体がん」があります。発症率は圧倒的に頚部がんが多いため、一般的に子宮がん検診といわれるものは、子宮頚がんの検診を指します。
 日本では年間約1万5000人が子宮頸がんを発症し、そのうち約3500人が命を落としています。発症のリスクが高いのは40歳前後ですが、最近では20代の発症も増えています。このがんは定期的な検診で予防することができます。欧米では検診率が非常に高く、70~80%が検診を受けていますが、日本ではまだ20%程度です。
 子宮頸がんは、発がん性ヒトパピローマウイルス(HPV)が、性交渉によって感染することが原因で発症すると言われています。このウイルスに感染しても、多くの場合感染は一時的で、ウイルスは自然に排除されますが、感染した状態が長く続くと子宮頸がんを発症することがあります。発がん性ヒトパピローマウイルスのうち、子宮頚がんが最も多く見つかるタイプは、16型と18型の2種類で、日本人子宮頸がん患者の60%から、このウイルスが見つかっています。子宮がんの初期症状として、不正出血、おりものの増加などがありますが、がんのごく初期の段階ではほとんど症状がないのが普通です。定期的に検診を受けることにより、がんになる前の前がん状態または初期の段階で発見できれば、子宮頸がんは100%治すことができるのです。近年は性体験の若年化で、20代の発症も目立ってきています。女性は20才になったら1年に1回検診を受けることをお勧めします。
 次に子宮頸がん予防ワクチンについてお話しをします。このワクチンは11歳から14歳での接種が効果的と言われ、優先的に接種することを勧めています。性体験のない段階、つまりヒトパピローマウイルスに感染する前に、体内に抗体を作ることによって、感染を未然に防ぐことができます。効果は約20年といわれていますが、機会があれば何度でも感染しますので、15歳から45歳までの女性に対しても接種することを勧めています。予防ワクチンは、すべての発がん性ヒトパピローマウイルスの感染を防ぐものではありませんが、子宮頸がんから多く見つかる、16型と18型のウイルスの感染を防ぐことができます。この2種類以外の発がん性ヒトパピローマウイルスの予防はできません。またすでに発がん性ヒトパピローマウイルスに感染している人に対してウイルスを排除したり、進行を遅らせたりすることはできません。                         
 ワクチンは半年間に3回接種しますが、費用は医療機関によって異なります。海外では公費補助がされている国も多いようですが、日本でも徐々に、費用を補助する市町村が増えてきています。娘さんやお孫さんのいるご家庭では、ぜひワクチン接種を検討していただきたいと思います。ワクチンを接種した後も、先に述べましたように、すべてのウイルスに効果があるわけではありませんので、10代でワクチンを接種しても20才になったら、定期的な検診は必要になります。
 次に子宮体がんについてお話しをします。体がんは40歳代から増えはじめ、50歳?60歳代に最も多く見られる疾患です。日本では従来は子宮がんと言えば頸がんが、大多数を占めていましたが、食生活の変化や少子・初産年齢の上昇もあり、体がんの発生率が増加し、若年での発症も増えています。子宮頸がんの原因がヒトパピローマウイルスの感染であるのとは違い、体がんの発生は女性ホルモンのエストロゲンの影響が大きいと言われています。そのため未婚の方、妊娠・出産の経験がないもしくは少ない方、閉経後の方、肥満体の方になど、エストロゲンの影響の強い人はリスクが高くなります。このようなリスクのある方は体がん検診を受けることをお勧めします。
 厚生労働省では検診率をアップさせるため、各市町村を通して対象年齢者に無料クーポンを配布しています。また各市町村でも検診を行っていますので、市町村窓口に問い合わせてみてください。各医療機関でも随時検診ができますので、ぜひご利用ください。
 現在、日本の女性の平均寿命は86歳で、世界一です。その長い人生を健康で明るく、生き生きと過ごしたいものです。さまざまながんがありますが、子宮がんは初期の段階で発見すればほとんど治る病気です。繰り返しますが、女性は20才になったら1年に1回、検診を受けるようにしましょう。
もし何か気になる症状があるときには、早めに病院で診察を受けてください。
今朝は子宮がんについてのお話しでした。