以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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農家の皆さんへ

いつまでも口からおいしく食べるために
2019年2月放送
坂下厚生総合病院
リハビリテーション科 理学療法士 佐々木

おはようございます。
会津坂下町の坂下厚生総合病院 リハビリテーション科 理学療法士の佐々木と申します。
今回、「いつまでも口からおいしく食べるために」というタイトルで、お話しさせていただきます。よろしくお願いいたします。

「食べることは生きること」
まずは生理的意義についてお話します。
生理的意義は、
①生命維持
②健康の維持・増進
③疾病の回復・予防
④生活リズムの維持
などが挙げられます。
 生きていくためには、食物をからだに取り入れて、エネルギーに変える必要があります。さらに、からだを作り、整えるためには、バランスのとれた食事が必要です。
炭水化物、タンパク質、脂質の三大栄養素に、ビタミン、ミネラルを加えたものが、五大栄養素と呼ばれています。
 体内時計とともに、からだのリズムを整えるには、規則正しく食事をする必要があります。血糖値の上昇がこのリズムを整えるのに関わっていることが知られています。

次に精神的意義は、
①満足感や充実感の獲得
②生活意欲の向上
などが挙げられます。
 食欲が満たされると、人は安心します。また好きなものを食べた時には、なんとも言えない満足感を得られた、という経験は多いと思います。それによって、意欲が出てきたり、生活にハリを感じることもあります。
 好きなもの以外にも、健康観に合わせた食事をしたり、話題のお店に行ってみたりと、食事は自己表現の一つであるとも言えます。

3つ目に社会的意義は、
①社会関係・人間関係の形成
②コミュニケーションの場
③マナー獲得の場
④行事や儀式
などが挙げられます。
 家族や友人、同僚など、集まって食事をすることで、食事は関係性を作る場でもあります。
 いのちあるものをいただく、作ってくれた人に感謝するということから、「いただきます」「ごちそうさま」という挨拶があります。また、一緒に食事をしている相手に不快な思いをさせないような食事の仕方も、食事を通して学んでいきます。
 おせち料理をはじめ、歳時や年中行事をたいせつにしてきました。また、結婚式、お葬式、その他の人生の節目にも会食はつきものです。

 そもそも、食べられなくなるとどうなってしまうのか?ということは、みなさんご存じだと思います。
まず、食べられなくと、筋肉の蛋白質が分解されて筋肉量が減少します。筋肉量が減少すると、歩く速度が遅くなったり、重いものが持てなくなります。また、内臓も筋肉でできているため内臓蛋白も減少すると、体調を崩しやすくなったり、傷が治りにくくなったり、臓器の障害が起きていきます。さらに進んでいくと餓死に至ります。

食べられなくなる原因は、たくさんあります。
①歯の数の減少
②入れ歯の不適合
③多剤内服による副作用
④嚥下筋(飲み込むための筋肉)の減少
⑤加齢に伴う身体的変化
などが挙げられます。
 先に挙げた原因を改善するためには、各診療科受診をお勧めします。
 歯の数の減少や入れ歯が合わないなどは、もちろん歯科を受診してください。
 薬の問題ですが、6種類以上のお薬を内服している方は、薬剤師や主治医に確認することをお勧めします。
 嚥下筋に関しては、耳鼻咽喉科の受診をお勧めします。ノドを専門として診療されている先生がいますので、いいアドバイスがいただけると思います。

 嚥下筋の筋力低下は40歳頃から始まるといわれています。
 ここで、反復唾液嚥下テストという簡単な検査を一つ紹介します。 30秒以内に唾液を3回以上飲み込めれば問題なし。3回未満の場合は、口の中の乾燥や嚥下筋力の低下などの問題ありと判断できます。是非テストしてみてください。

 もし、テストに引っ掛かってしまっても、これからお伝えする筋トレを試してみてください。
 この運動は、嚥下おでこ体操といいます。やり方は、椅子に腰かけた状態で、おへそをのぞき込みます。次に片手をおでこにあてて、頭を押し返すように力を加えます。声を出して15秒数えるようにしましょう。食事の前に実施していただくことをお勧めします。

 最後になりますが、食べることは生きる活力になります。しっかり食べて元気に働きましょう!