以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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農家の皆さんへ

コロナ禍における認知症予防と認知症悪化予防について
2021年2月放送
坂下厚生総合病院
認知症看護認定看護師 久和 美恵

 おはようございます。JA福島厚生連 坂下厚生総合病院で認知症看護認定看護師として活動しています、久和美恵と申します。「認知症看護認定看護師」という言葉はなじみのない言葉かもしれません。今日のお話の前に少しだけ私の仕事を紹介したいと思います。私は認知症の方が地域の中で安心して過ごすことができるようお手伝いをしています。
 例えば入院中の患者様に認知症の方がいた場合、安心して治療を受けることができるよう、スタッフとともに「○○をしてほしい」というニーズを見つけケアを行います。また地域の方へ認知症や認知症のケアについて講話を行ったり、家族や知人が認知症なのではないかというご相談なども伺っています。
 さて本題に移ります。「認知症」は数年前から注目され、認知症予防や認知症悪化予防について、テレビや雑誌などで取り上げられてきました。認知症予防や悪化予防ではよく「家にばかり閉じこもらず、外へ出かける方がいい」といわれてきました。
 ところが最近はコロナが流行し、「外出自粛」といわれるようになりました。家にこもることが多くなり「認知症がすすんだ気がする」「外に出かけられなくて、何もする気がおきない」「ぼーっとして過ごすことが増えた」と家族の方が相談に来ることが増えました。
 認知症とは一度正常に発達した認知機能が萎縮など何らかの原因で低下し、社会生活を送ることが困難になることを言います。例えばお金の支払いの時、計算ができなくなったり、料理や掃除の手順がわからなくなったり、約束を忘れてしまったりなど日常生活を送ることが困難になってきます。数年とか数ヶ月という期間を経て、行動や話すことに変化が出てきます。
 実は介護が必要になった原因の病気、第一位は認知症といわれています。人生の最後には誰かに助けられながら生活する場合があるといわれます。その時期を短く、いつまでも生き生きと過ごすため、今日は自宅でできる認知症予防、または認知症悪化予防についてお話ししたいと思います。
 「自分史」という言葉を聞いたことはありますか?自分の生き方を文章化したものです。実はこの「自分史」をつくり、生きてきた過程を振り返ることが、認知症予防または認知症悪化予防に効果があるのではないかと注目されています。
 認知症のお薬を使わない治療の一つに「回想法」があります。「回想法」は、昔の写真や音楽などをみたり聞いたりしながら、思い出を語り合うことです。「自分史」はこの「回想法」がもとになっているといわれています。「自分史」づくりは、気分の安定やコミュニケーション力の改善に効果があるとされています。また誰かと一緒に作る場合、つくった相手ともよい関係づくりができるといわれます。
 「自分史」をつくる方法です。ノートに写真を貼ってみたり、小説のように書いたりしてもよいといわれています。今まで書いた日記をまとめたり、アルバム整理のような形でもいいでしょう。一人でできるなら一人で。できないときは、家族など誰かと一緒に行ってみてください。まずは①年表を作り、大まかな出来事をかき出してみます。アルバムや日記を参考にすると、思い出しやすいと思います。②次にエピソード、出来事や出来事の背景などを箇条書きにかき出します。記憶が不鮮明の時は、同級生などに連絡し、昔話を語り合ってもいいと思います。工程の3番目は構成を決めます。テーマは何にするかです。自分の今までの経緯でもよいですが、趣味や仕事などに絞ってもよいでしょう。④最後に文章化します。 
 今は「ヒストリーアルバム」「自分史アルバム」といった名前で写真屋さんでも作れるようです。ノートなどで手作りしてもよいですが、このようなサービスを利用すると本格的なものが作れそうですね。
 認知症の方の「自分史」づくりには少しコツがあります。ページ数が少ないこと、写真が多いこと、見やすいことです。写真選びはその方の好きな写真を見つけて選んでください。好きな写真を見つけるにはどうすればよいか、悩むかもしれません。見つけるヒントは「笑顔で話していること」と「繰り返し話す内容」です。男の人は自慢話、女の人は苦労話を好む、という話もありますが、仕事や子育てばかりではなく、もしかしたら学校に通っていた時の同級生との思い出や、兄弟と暮らしていた時の話が好きかもしれません。認知症の場合、記憶障害は現在に近いほどすぐに忘れてしまうことが多いのですが、認知症がすすんでも昔の記憶は残りやすいといわれます。家族と一緒であれば昔のことを質問し会話しながら作る方が効果的です。
 認知症の方が家族と一緒に作るときの注意点ですが、もし事実と違っていても「違うでしょ」とか「こうだったじゃない」というように否定しないでください。否定されることで自信がなくなったり、意欲がなくなったりすることがあります。事実と違う話をしても「そうなのね」と同調したり、「その時はどうしたんだっけ」と質問したりなど、おとぎ話や昔話を聴くような気持ちで接してください。
 こんな時だからこそ、家族でゆっくり思い出を語り合ってみてください。また自分の生き方を振り返り、認知症の予防や認知症悪化予防に繋げていただけたらと思います。