以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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農家の皆さんへ

福島県民の疾病予防-生活習慣が寿命を決める
2021年4月放送
白河厚生総合病院
前原 和平

 皆さん、おはようございます。白河厚生総合病院の前原です。
 新型コロナウィルス感染症の蔓延により、生活が制限され、心の晴れない毎日をお過ごしのことと思います。間もなくワクチン接種が始まることと思いますが、一日も早く終息することを祈りたいと思います。
 今日は「福島県民の疾病予防-生活習慣が寿命を決める」というタイトルでお話をしたいと思います。コロナウィルス感染症とは関係のない内容ですが、一言で申しますと、福島県民は生活習慣が芳しくなく、生活習慣病にかかりやすいために寿命を縮めており、生活習慣の改善が必須であるということです。
 日本人の平均寿命が世界一であることは良くご存知のことと思います。令和2年の統計で、男女合わせた平均寿命は85歳で世界第一位です。古く明治元年、1868年の日本人の平均寿命は30代後半で40歳に達しておりませんでした。大きな原因は乳幼児から成人するまでの死亡率が高かったことによります。江戸時代には、無事に成人できる男女は5割に満たなかったそうです。一方、江戸時代でも60歳まで生きると平均余命は10年ほどあったそうですから、70歳くらいまでは生きられたということになります。事実、葛飾北斎などは80歳を超えても現役で活動していたことが知られています。
 その後、平均寿命は徐々に延伸していき戦後の昭和22年1947年に初めて50歳を超えました。驚くことにそれから令和2年の85歳まで、73年間で平均寿命が35歳も伸びたことになります。もちろん6万年という人類史上初めてのことになります。
 それでは福島県民は日本の中で長生きなのでしょうか。長生きではないのです。平成27年、男性は全国平均より2年少なく47都道府県中41位、女性は0.6年少なく43位と男女とも最下位グループに入っています。それでは、何が悪いのでしょうか。死因別年齢調整死亡率を見ると、福島県では急性心筋梗塞による死亡率が男女とも日本一、脳梗塞による死亡率が女性5位、男性8位と梗塞よる死亡率が高いことがわかります。この順位は大震災前の平成22年でも同様でした。
 梗塞とは何かと申しますと、年をとりますと動脈硬化が進んで動脈の内側がお肌のようにざらざらと荒れてきます。正常では血液が血管の中で固まることはありませんが、荒れがひどくなるとそこに血液が固まり始め、ついには動脈を詰まらせてしまいます。その結果その先には血液が流れなくなり細胞が死んでしまいます。このような病気を梗塞と呼びます。現在の日本人は27%ががんで亡くなり、25%が動脈硬化性疾患で亡くなりますが、福島県ではがんで亡くなる人よりも動脈硬化性疾患で亡くなる人の方が多くなっています。
 病気にかかりやすくし、悪化させやすい因子を危険因子と呼びますが動脈硬化の3大危険因子は高血圧症、喫煙、高コレステロール血症です。その他に、糖尿病や運動不足などが挙げられます。
 高血圧症、糖尿病、動脈硬化性疾患は生活習慣病の代表です。それでは福島県民の生活習慣はどうなのでしょう。
 食塩摂取量と高血圧症の間には強い関係があるとされています。1日食塩摂取量が1gに満たないアマゾン河奥地のヤノマモインディアンには高血圧症が一人もいないそうです。福島県民の食塩摂取量は男性11.9g、女性9.9gで男女とも全国2位、そして、高血圧症の人口当たりの数も全国2位です。つまり、福島県民はしょっぱいものが好きで高血圧症になりやすく、動脈硬化が進みやすいということになります。ですから現在の食塩摂取量から2gくらいは減らさなければなりません。具体的に申し上げますと、沢庵3切れ1g、大きな梅干し1個2g、みそ汁1杯2gの食塩が含まれています。減塩の際の目安にしてください。
 タバコは動脈効果も進めますし、がんにもなりやすくします。福島県民の喫煙率は平成28年で男性 34.4%、女性 10.7%で、男女計全国4位です。したがって、喫煙率も下げなければなりません。
 肥満率が高いことも挙げられます。肥満は食べすぎと運動不足に関係しますが、福島県民は予想外に肥満率が高いのです。平成28年のデータで福島県は肥満率が女性1位、男性2位となっています。大震災後の閉じこもりがちな生活習慣も関係しています。肥満に関連して糖尿病による死亡率は全国4位、人口当たりの糖尿病の数は全国12位です。
 カロリーに関して多くの方々が誤解していることをお話しておきたいと思います。結論から申し上げますと、運動での消費カロリーは思ったよりも少なく、食べ物のカロリーは思ったよりも多いということです。1時間歩く運動の消費カロリーはわずか200カロリーですが、一方オレンジジュースコップ一杯には80カロリー、ショートケーキ1個には300カロリーが含まれています。つまり1時間歩ってきて、ご褒美にケーキ1個とジュースを飲むと200カロリー過剰になってしまいます。ご注意ください。
 現在では、寿命の50%はその人の生活習慣で決まると考えられています。つまり、自分の寿命の半分は自分に責任があるということになります。福島県民は塩分とカロリー摂取量を減らし、運動習慣をつけ、禁煙を進めなければなりません。生活習慣を改善して寿命を延ばしましょう。