
| =間違いだらけのトレーニング法= |
2004年5月
福島県農協会館診療所
所長 伊勢 重男
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| [はじめに]
マンガ『巨人の星』の主人公『星飛雄馬』を御存知ですか。40代以上の方なら知っていると思いますが、彼は昭和40年代前半の少年マンガ雑誌に登場し、一世を風靡したことになっているプロ野球選手です。子供の時から野球の鬼となった父から特訓を受け、想像を絶する苦しい練習の末、若くしてスーパースターとなるまでの物語です。
この物語には、激しい練習方法が多数登場します。日本の伝統的な(科学的裏付けのない)トレーニング法が採用されていますが、このストーリーではあたかも理想のトレーニング法のように描かれています。
それらが当時のスポーツの世界、とりわけスポーツ少年団のトレーニングに少なからぬ影響を与えたようです。ですが、今日ではこの前近代的なトレーニング方法は、かえって身体に悪影響を及ぼすことが明らかになり、間違った運動法として一般の人々にも次第に認識されるようになりました。
しかし、今でもこのことを無視し、昔ながらの練習法に固執して自ら実践したり、子供たちを指導しているコーチ、監督がいるのも事実です。次に紹介する項目はまじめにやればやる程逆効果となるトレーニング方法です。
[1.腹筋を鍛えるには膝を曲げないでやるのがよい。]
皆さんの中には、腰痛を予防するため、腹筋を鍛えるよう医師からすすめられたことがある人もいることでしょう。このとき大部分の人は仰向けに寝て、他人に足を押さえてもらって上半身を起す運動をやっていることと思います。この場合膝関節を曲げないでやると、かえって腰背筋に障害を与えてしまいます。腹筋を鍛える時は必ず膝関節を90度に曲げて行うよう注意しましょう。
[2.ウサギ飛び訓練は足腰を鍛えるのに最適である。]
この練習法は、スポーツ根性物を売りにしている映画やTVなどで脚力をつける場面として登場しています。しかしこれは非常に危険なトレーニング法として最近はよく知られるようになりましたが、まだ一部の指導者は部活などのトレーニングに取り入れているようです。これこそ腰痛の原因となりますから、厳禁すべきトレーニング法です。
[3.柔軟体操は反動をつけてやると効果的である。]
準備運動の後に、身体の柔軟性を得るために二人一組となってやる練習をした経験はありませんか。例えば一人が足を伸ばして座り、別の人が後ろから力一杯反動をつけて背中を押して前に倒してやるとか、背中どうしを付けて腕を組み合い、一人の背中をぐっとそらすなどといった運動です。
この運動をやるときは、学校の部活などでワッショ、ワッショと反動をつけてやる場合が多いようです。
この運動をやると、筋肉はかえって反射的に収縮しようと反応し、無理にやると筋の障害を誘発しますので、反動をつけてやることは厳禁です。やるならばゆっくりと時間をかけて筋を伸ばしてやるべきで、急激な動作は逆効果といえます。
これを合理的に行おうとするために考案されたのが『ストレッチ体操』です。
[4.筋肉トレーニングを始めるには早いほどよい。]
『星飛雄馬』は7歳の時から”大リーグボール養成ギブス”なる器具を腕に装着させられ、筋肉強化トレーニングを課せられます。これは運動生理学的にはまったくムチャな話で、これをやったら子供のスポーツ生命を断つことになります。
本格的な筋肉トレーニング(筋トレ)は、一応体の発育が終わった頃でないと効果がありませんし、逆効果となる場合もあります。年齢的にいうと17、8歳頃から開始すべきだとされています。
[5.運動中や練習中に水を飲むと疲れ易くなる。]
かつて学校の部活では、練習中に水を飲むことは禁止されていました。今ではこれが誤っていることが広く認識され、むしろ積極的に適量を飲むように指導されています。しかし成人ゴルファーの中には、プレー中飲水せず、ハーフの昼食時にいきなりビールを飲む人がいるようです。
このような水分の摂りかたは、大変危険で、心筋梗塞や脳卒中の誘引となることを知っておきましょう。
以上、主として少年期において多くなされる間違った運動方法について述べました。しかし一般成人の方々も役立つと思います。
一つでも思い当たることがあったら、正しい運動法を身につけるよう留意してください。
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