以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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Dr.メッセージ

そんなに大騒ぎすることですか
2010年10月
福島県農協会館診療所
所長 伊勢 重男

福島県農協会館診療所 所長 伊勢 重男
 最近のテレビ、新聞の話題として「民主党代表選挙」とともに「帝京大学病院の多剤耐性アネシトバクター菌院内感染問題」が大々的に報道されました。特に帝京大は感染者の死亡が出たことより、業務上過失致死罪の嫌疑で取り調べられたといいます。なんだか県立大野病院医師逮捕事件を思い出します。
 これに対して私たち医療者からみれば、どうしてこんなに大騒ぎとなるのか、大きな違和感を抱いています。なぜならこの大騒動の発端がマスコミの報道の在り方にあり、かえって不要に国民の不安を煽っていると思うからなのです。
 考えてもみてください。かつて「MRSA菌報道の大騒ぎ」「エイズ騒動」そして昨年の「新型インフルエンザ流行時の滑稽な空騒ぎ」などありましたが、あの経験を一般の皆さんはどうお考えでしょうか。あの時は私も対応に大わらわでしたが、今となってはあの騒ぎは何だったのという思いがあります。
 さて、アシネトバクター菌とはどのような菌なのでしょうか。これはごく一般的な菌で、湿った土中や水中に棲んでいます。そしてごく普通に一般の人の皮膚や手にも付いています。健康な人は保有していても全く危険はありませんし、症状も出ません。(菌を保有していても感染とは言いません)もともとこの菌は抗生物質が効きにくい菌なのですが、通常の人には問題がないのです。
 しかし、抵抗力の弱くなった高齢者や重症患者のような人達に対しては大きな症状をもたらします。強いものには弱い、弱い者には強いという弱い者いじめのような菌を「日和見(ひよりみ)感染菌」といいます。ですから、病院に入院しなければならない重症患者や高齢者は抵抗力が弱いため、このような菌が暴れだすわけです。特に重症な患者さんが集まる大学病院では死亡率が高いのですが、死亡の直接原因が日和見感染菌によると思われる場合はきわめて少ないのではないかと考えます。
 「多剤耐性」とはいろいろな抗生物質が効かないことを意味しますが、今まで日本で報告されている多剤耐性アシネトバクター菌でも2,3の抗生物質で有効だといわれていますから、全くお手上げというわけではありません。
 それより大切なことは、耐性菌を増やさないように努めることです。そのためには一般の方々も安易に抗生物質を使わないようにお願いします。以前にひどい風邪に罹った時に抗生剤がよく効いたからといって、次に新しく罹った軽い風邪症状があった時に、残っていた抗生剤を自己判断で飲むようなことは、新しい耐性菌を作る危険性がありますからくれぐれもご注意下さい。