以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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Dr.メッセージ

誰にでも起きる大震災後の後遺症
2011年5月
福島県農協会館診療所
所長 伊勢 重男

福島県農協会館診療所 所長 伊勢 重男
 あの未曾有の東日本大震災を経験してから、早くも二か月になろうとしています。「ここら」もやっと発行できる状態になったようです。組合員の皆様はいかがお過ごしでしょうか。
 運命の3月11日、私はJAビルの1階でちょうど診察している最中でしたが、突然の衝撃に襲われ、とにかく館外に退避するのに精一杯でした。私は1階にいたからまだ増しな方でしたが、ビルの高階にいた職員たちの恐怖は如何ばかりだったでしょうか。
 その後余震が何日も続きましたが、私は余震がないときでも、なんだか何時も余震を感じるような、あるいは体が揺れている感覚に襲われました。地震の恐怖で自分の神経がおかしくなったのかなと他人には黙っていましたが、後で多くの人も同じような感覚に襲われている話が出てきて、実は内心ホッとしました。共通の体験を話し合ってからは、不思議なことにこの感覚は次第に薄らいでいきました。これは「急性ストレス障害」と呼ばれるケースを自ら体験したことになりました。
 一過性急性ストレス障害(ASD)とは、心に大きなショックを受けた直後に現われる心的、身体的症状をいいます。一般的な症状としては「いつもよりイライラ、不安感が強い」「余震の後は眠れない、眠りが浅い」「まだ体が揺れている感じがする」「エレベーターや狭い場所(閉鎖空間)が怖くて仕方がない」「以前より疲れ易い、肩こりが強い、頭痛がひどくなった」「アルコール量が増えた」などのようです。福島市周辺ではこの程度の症状が多いようです。
 このような場合は自分一人で抱え込まないで、共通の体験を持つ人たちに話を聞いてもらったり、話し合ったりすることで症状が大分改善することが多いのです。それでも良くならない時は、気軽に精神科か心療内科に相談するのがよいでしょう。
 子供が夜急に不安がったり、余震を異常に怖がったりすることがあります。こんな時こそお母さんの出番です。「大丈夫、全然心配ないのよ」とギュッと強くハグハグ(抱擁)してあげましょう。
 ただし、浜通りで言語に絶する体験をした方々では症状が全く違います。ASDの症状が強く現れたり、「自分だけが生き残って犠牲者に申し訳ない」と自責の念にさいなまれたりして、鬱や様々な身体症状が何年も続いたりします。これが今問題になっている「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」です。厄介なことに数年経ってから発症する時があるので要注意です。