以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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Dr.メッセージ

糖尿病性認知症
2015年10月
福島県農協会館診療所(所長)
重富 秀一

 2011〜12年にアメリカで行われた調査によれば、糖尿病の人は12〜14%、前糖尿病(正常より血糖値が少し高い人)は37〜38%だそうです。アジア系の人は白人よりも2倍糖尿病になりやすいことも判明しました。日本の統計では、血糖値が高い人(糖尿病とその予備軍)の数は2,200万人以上と推定されています。血糖値が高くともほとんどの人は無症状ですので日常生活に不都合を感じることはありません。しかし正常よりも高めの血糖値が長く続くと血管が障害され、動脈硬化の進行が早まります。細い血管が障害されれば糖尿病特有の合併症となり、動脈硬化が進行すれば比較的若い年齢で心筋梗塞や脳梗塞を発症します。高齢者になると自覚症状がない人でも無症候性脳梗塞(症状のない小さな脳梗塞)を認めることがありますが、糖尿病の人は比較的若いうちからこのような病変を多発する場合があります。脳血管障害が進行すると認知症になる確率が増加します。認知症の出現頻度は65〜69歳では1.5%なのですが、70歳を過ぎる急激に増加し、85歳以上ではなんと27.3%になります。糖尿病の人が認知症になる頻度は、血糖値が正常な人に比べ2〜4倍高いと言われています。糖尿病性認知症の原因の多くは、脳梗塞など脳血管病変によって起こる「脳血管型」であると言われていましたが、最近では原因不明の「アルツハイマー型」の頻度も高いことがわかってきました。血糖値が高いとなぜ認知症になり易いのかについてはまだ十分解明されていませんが、HbA1cの上昇とともに認知機能(とくに前頭葉機能)が低下するそうです。また、血糖のコントロールが悪いと20年後には認知機能が低下することも明らかになりました。健診で血糖値が高いと言われている人は早めに二次検査を受けて食事や運動などの生活習慣を改善し、血糖値を正常に保つ努力をしましょう。HbA1cを7.0%未満にコントロールすることが認知機能を良好に保つ有効な対策になりますので、糖尿病で通院している人は医師の指示に従って適切な治療を継続してHbA1cを6%台に維持するようにしてください。認知症は早期に発見して適切に対処することが必要な病気です。高齢者と同居しているご家族の方は、お年寄りの日常のちょっとした言行の変化を見逃さないようにしてください。