以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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Dr.メッセージ

訪問看護と訪問介護、似て非なり!!
2017年2月
JA福島厚生連 訪問看護ステーション万葉 所長
羽根田 民子

 新年あけましておめでとうございます。本年も鹿島厚生病院をはじめJA福島厚生連をよろしくお願いいたします。ところで、皆さんは車を運転していたりすると「訪問看護ステーション○○」とか「訪問介護事業所○○」もしくは「ヘルパーステーション○○」などと書かれた車を見かけることはないでしょうか。これらの車は、看護や介護が必要な方のご自宅に直接訪問して、訪問看護や訪問介護といったサービスを提供することを目的として、利用者さんのご自宅に向かっていたりする車です。すでにこれらのサービスをご家族などが受けたことがある方なら、これらの単語を耳にしたことがあるのではないでしょうか?この訪問看護と訪問介護一文字違いで単語自体は非常に似ている上、ご利用する方が直接これらの事業所を訪れサービスを依頼することがないことから非常に紛らわしいと思われます。そこで、今回はこの訪問看護と訪問介護の違いについて説明させていただきます。

○どうしてこのようなサービスがはじまったの?
  訪問看護と訪問介護では訪問看護の方が歴史は古く、1991年の老人保健法改正で老人訪問看護制度が創設されたことで誕生しました。医療保険法の中で病院・診療所での病床の有効利用を目的として、比較的症状が落ち着いていて医療行為が必要な方に自宅に戻っていただき、その代わり必要な医療行為を看護師が自宅を訪問して施すことを目的として始まっております。一方の訪問介護は、2000年に介護保険法施行に伴い、介護や支援を必要とする方が自宅で自立して生活することを助けることを目的として始まっております。また、この介護保険法施行に伴い訪問看護も一部、介護保険法に組み入れられるようになっております。

○どんなケアが受けられるの?
 訪問看護は(准)看護師免許を取得した(准)看護師がケアを行います。その範囲は、病状の観察と判断、医師の指示による医学的処置、療養上のお世話、リハビリテーション、終末期のケアなどといった範囲に及びます。訪問介護は基本的には免許は必要ありませんが厚生労働省が認定した養成講座を受講したものがケアを行います。ケアの範囲は療養生活上のお世話となります。しかし、専門的な研修を受けた者は医師の指示による医学的処置の中で、たんの吸引や経管栄養(胃ろう、経鼻カテ)の処置も行うことができます。なお、訪問介護のケアを行う者の中には国家資格として「介護福祉士」の資格を有する者もおりますが、ケアできる範囲に相違はありません。(表1参照)


○どんな人が対象なの?
 まず、訪問看護のサービスは、利用する保険が介護保険、医療保険、自費でそれぞれ異なってきます。サービスを利用しようとした場合介護保険でのサービス利用が優先され、65歳以上の方もしくは、40〜64歳までで加齢が原因と思われる「特定疾病(16種類)」に該当する方は、お住いの市町村の窓口にて介護度認定を受けていただき、その判定で要支援1〜2、要介護1〜5と判定された場合が利用対象となります。しかし、介護保険では、判定によって月間支給限度額が決まっており、重い病気の場合など、介護保険だけでは必要なサービスが受けられない場合があります。そういった場合は、医師が必要と判断した場合に限り医療保険にてサービスを受けることができるようになります。介護保険での月間支給限度額を超え、また、医師の必要性が認められず、利用者やご家族のご都合にて提供限度を超えてサービスを受けたい場合はその分は自費にてサービスを受けることもできます。
 次に訪問介護の対象者は、訪問看護の利用対象者から医療保険の対象者を除いた方が対象となります。(表2参照)


○どうすればサービスを受けられるの?
 訪問看護は医療保険、介護保険のどちらでサービスを受ける場合もかかりつけ医の訪問看護指示書が必要となります。最初に介護保険が優先となりますので、介護保険でサービスを受けようとする場合は、市町村の介護の窓口に相談し介護認定してもらいます。訪問認定調査などを経て介護認定をしてもらい要支援、要介護のランク付けがされます。その後、地域包括支援センターなどでケアマネを決めてもらい介護の計画(ケアプラン)を作成していきます。そこで医療行為が必要になった場合は、ケアマネからかかりつけ医に訪問看護指示書の作成を依頼していただき、その訪問看護指示書に従ってケアが開始されます。次に介護認定が受けられなかった場合などは医療保険を使ってサービスを受けることになりますが、直接かかりつけ医に相談して医師が必要とした場合にはかかりつけ医から直接訪問看護指示書が作成されそのケアを受けることができるようになります。訪問介護のサービスを受ける場合は、介護認定を受けた後、ケアマネが作成するケアプランに訪問介護の利用を入れていただいてサービスを受けることとなります。

○料金はどのように決まるの?
 医療保険を使った場合、訪問看護での料金は受けたケアの内容によって訪問看護に支払われる料金が決まり、自己負担はその中の1〜3割となります。なので、手厚いケアを受けた場合にはその分だけ料金が高くなります。一方、介護保険を使った場合、使用できる介護保険の上限は、介護認定のランクによって変わってきます。介護度が高いほど多くのケアを受けることができ、自己負担はその全体の料金の1〜3割を支払うことになります。自費の場合はこの範囲を超えてサービスを受けようとする場合は、負担割合が10割になります。一般的に訪問看護と訪問介護とでは訪問看護の方が医療的なケアを受けるので1回当たりの単価は高くなります。毎日医療的なケアを受けなくても、療養のお世話だけであれば訪問介護で十分であるので、訪問看護が週に1回で訪問介護を週に5回といった形で、組み合わせてケアマネにケアプランを作成してもらい、受けたサービスの自己負担分を支払うこととなります。ケアマネにケアプランを提示されたときに料金についてしっかりと確認してご利用していただければと思います。