以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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Dr.メッセージ

血圧の話
2017年5月
福島県農協会館診療所(所長)
重富 秀一

 「薬を服用することなく安全にかつ健康的に血圧を下げることができる」とか「血圧を下げる薬(降圧剤)には未だ様々な副作用があり、なるべく飲まないほうが良い」というような話を週刊誌や雑誌で読んだことがある方は多いと思います。実際はどうなのでしょう?今回は、高血圧の基本的なことをお話します。血圧とは血液が流れるときに血管を押す圧力のことです。心臓は収縮と拡張を繰り返していますが、心臓の出口には逆流を防ぐ弁があるので、心臓が拡張したときでも血液は流れ続けます。心臓が収縮したときの血圧が最も高く、拡張したときの血圧が最も低くなります。血圧は、心臓が一回に押し出す血液の量とそのときの血管抵抗によって決まります。心臓の活動や血管抵抗は、外気温、精神状態、運動などで変化するので、正常な人でも血圧は常に変動しています。日中活動時の血圧は夜間睡眠中に比べ10〜20mmHg程度高いことが知られています。普通の生活をしていても、一時的に血圧が高血圧域に達することもありますが、一時的な血圧上昇を高血圧とは言いません。
 さて、いま高血圧で治療している人は、全国で1,000万人以上いるそうです。健診で高血圧が疑われた場合は、日本高血圧学会の高血圧の診断手順(図2-1)により診断し治療を行ないます。ほとんどの高血圧は本態性高血圧といわれる遺伝的素因を背景したものですが、まれに腫瘍や血管病変が原因のこともあるので、初めて高血圧といわれた人は治療を始める前に専門的な検査を受けてください。
 ところで、「薬を服用することなく安全にかつ健康的に血圧を下げることができる」とか「血圧を下げる薬には様々な副作用があり、なるべく飲まないほうが良い」という週刊誌や雑誌の記事をお読みになった方も多いと思います。確かに塩分を制限しただけで血圧が著明に低下する高血圧(食塩感受性高血圧)もありますが、その割合はだいたい30%位です。ただ、年齢とともに腎臓の働きは衰えてきますので、食塩感受性高血圧でない人でも塩分を控えたほうが良いのは間違いありません。ただし、生活習慣を是正(表4-1)して血圧が下がる程度は人によってさまざまですし、平均すると10mmHg未満なので(図4-1)、1ヶ月くらいチャレンジしても血圧が正常域まで下がらないときは降圧薬を服用して血圧を安定させるべきです。薬の副作用を過剰に心配する方もいますが、治療開始前に医師と良く相談して疑問を解消し、納得して治療を始めましょう。


高血圧治療ガイドライン2014(日本高血圧学会編)より