以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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Dr.メッセージ

高尿酸血症の診断と治療
2017年7月
福島県農協会館診療所(所長)
重富 秀一

 高尿酸血症とは、男女や年齢を問わず尿酸値が7.0mg/dl以上を示す状態のことを言います。男性に多く、30歳以上の男性では30%以上が高尿酸血症を有しています。女性における頻度は4%未満です。高尿酸血症が続くと、体内の各部に尿酸塩が沈着します。関節内に尿酸塩が沈着すると急性関節炎を発症し、関節が赤く腫れて、激しい痛みが出現します(痛風性関節炎、痛風発作)。腎臓に沈着すると腎臓の働きが低下します(痛風腎)。尿中の尿酸値が上昇すると尿路に結石ができることがあります(尿路結石)。また、皮膚の下やアキレス腱などに尿酸塩が沈着して瘤ができる場合もあります(痛風結節)。最近では、高尿酸血症が動脈硬化性疾患や糖尿病、メタボリックシンドローム、癌などとも関連があることがわかってきました。女性は男性よりも低い値から生活習慣病のリスクが高まるとも言われています。尿酸沈着症の症状がない高尿酸血症を「無症候性高尿酸血症」と言いますが、高尿酸血症を基盤とするさまざまな合併症の発症を予防するためには、症状がなくとも血清尿酸値を適切な値まで低下させる必要があります。血清尿酸値は日内変動を季節変動があることがわかっているので、初めて高尿酸血症を指摘された人は、日時を変えてもう一度検査を受けてください。繰り返し測定しても尿酸値が7.0mg/dl以上ならば尿酸沈着症の発症や生活習慣関連疾患の発症を予防するために食事や運動の習慣を見直し、是正すべきことがあれば改善する努力をしましょう。レバー類(210〜320mg/100g)、白子(300mg/100g)、一部の魚介類 エビ、イワシ、カツオ(210〜270mg/100g)などには尿酸の材料となるプリン体が多く含まれていますのでこれらの食べ物は少し制限してください。お酒を控え、適度な運動をするのも良いといわれます。ただし、供給されるプリン体の80%は体内で壊れた細胞の核内の核酸(DNA、RNA)に由来しますので、生活習慣を改善しても尿酸値が正常化しないこともあります。生活習慣の改善に取り組んでも尿酸値が9.0mg/dl以上のときは薬物療法が推奨されます。高血圧や糖尿病など心・血管障害のリスクを持っている人では、8.0mg/dl以上で治療を開始したほうが良いということになっています。自覚症状がないと薬を飲むことをためらう人が少なくありませんが、正しい理解と医師の指導ものとで適切な管理をすることが大切です。