以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
JA福島厚生連からの最新の情報は、TOPページからご覧ください。



農家の皆さんへ

帯状疱疹後神経痛について
2003年5月20日放送
白河厚生総合病院
麻酔科 医師 白石 克則

 おはようございます。きょうは、帯状疱疹後神経痛についてお話いたします。
 まず、帯状疱疹ですが、これは、体のある限られた場所に、ぶつぶつの水泡がたくさんできて、それがまたとても強い痛みを伴うような病気です。原因は、子供の頃かかった水ぼうそうのウイルスです。このウイルスは、長い間神経の根元に潜んでいるのですが、高齢になって抵抗力が弱くなると、その神経に沿って増殖し炎症を引き起こします。神経の末端は皮膚に届いているので、皮膚にも炎症ができてぶつぶつの水泡ができます。しかし、もともとは神経の病気であるため強い痛みが出るようになるのです。このウイルスに対してはよい薬ができていますから、帯状疱疹になった場合皮膚科などのある病院できちんと治療を受けてください。こうすることが神経痛になることを防ぐ第一歩です。
 しかし、このような治療を受けても。中には帯状疱疹の後遺症として神経痛になってしまう方もいます。これはぶつぶつの水泡が消えて、色素沈着を残すくらいになおった後でも持続的な痛みだけが残る状態をいいます。その特徴は、ひりひり、焼けるような痛み、または針で刺されるような痛み、あるいは電気が走るような痛みといったものです。また、皮膚が少しこすれただけでも痛がるというのも特徴的です。
 帯状疱疹後神経痛で問題な点は、この病気があまり理解されていないということです。すなわち、帯状疱疹のいかにも強そうなぶつぶつの水疱があるときには家族や周囲の人達は患者さんの痛みをよく理解してくれます。しかし、水泡が消えて色素沈着を残すくらいになおった後でも依然として患者さんが痛みを訴え続けると、家族や周囲の人達はだんだんにそれをうるさく感じるようになり、さらには痛みは気のせいであるとか、甘えているとか、と考えるようになることがあります。そして、患者さんへの対応がやさしくなくなり、このことが患者さんをうつ状態にし、痛みをさらに強く感じさせるという悪循環にさせてしまいます。
 我々医師の中にも、帯状疱疹の治療については良く勉強していても、帯状疱疹の後の神経痛についてはあまり理解していない方もいるようです。例えば、ぼつぼつの水泡は薬を使ってうまい具合に無くなりました。神経痛は残りましたが、死ぬような病気ではありませんから後は我慢してじっとしていてください、というような理解のしかたです。
 確かに現在帯状疱疹後神経痛を短い期間で確実になおせる治療法はありません。ステロイドホルモンを脊椎麻酔のように使うと良いという報告もありますが、まだ広くは普及していないようです。しかし、完全ではありませんが少しでも痛みを和らげる治療法はあります。
 まず、内服薬による治療です。薬といっても普通の痛み止めではありません。代表的なものは、うつ病やてんかんに使われる薬です。うつ病やてんかんのような病気は脳の中にある神経の流れに異常が起きた状態です。一方、帯状疱疹後神経痛も、体にある神経の流れに異常が起きることが原因と言われています。このため、うつ病やてんかんに使われるような神経の流れを改善する薬が効くのだと考えられます。これらの薬にはふらついたり、眠くなったりするような副作用がありますから、最初は少ない量からはじめて、効果と副作用の出方を見ながら少しずつ増やしていきます。このような薬の使い方は神経科や麻酔科などといったところで行っています。
 もう一つの治療法として神経ブロックがあります。神経ブロックは手術の麻酔で行っているもので、これを痛みの治療に応用したものです。神経ブロックは薬があまり効かず、痛みのために体調が悪くなったような場合に行います。神経ブロックを行うと痛みは改善しますが、一方では一時的に血圧が下がったり、足が動きづらくなったりするなどの合併症も出やすくなります。このため、我々の病院では安易には神経ブロックをやらないようにしています。あくまでも薬が効かない場合に、入院していただいた上で最新の注意をはらって行うようにしています。
 一つ注意していただきたいことは、これらの治療をおこなっても神経痛は完全になくすことはちょっと難しいということです。神経ブロックにしてもこれをやめてしまえば少なからず痛みはでてきます。患者さんの中には、痛みが完全にとれなければ満足できない、だったら治療しないほうがましだ、などとおっしゃる方もいます。お気持ちはわかりますが、残念ながら今のところ完全な治療法はないのです。ですから、大切なことは治療の目標地点を最初からあまり高くしないことです。例えば、痛くて夜眠れなかったけれど、まずまず眠れるようになったとか、昼間痛くて家の中にこもっていたけれど、お茶のみに出かけるときはあまり痛みが気にならなくなったとかです。頭を切り替えて少しでも良くなるようにしていきましょう。
 帯状疱疹後神経痛は高齢者に多い病気です。高齢者の方々はこれまで家族や地域、あるいは日本のために努力してこられました。確かに神経痛は命に関わる病気ではないかもしれません。しかし、痛みのためにつらい思いをしている方々が、適切な治療を受けることによって少しでも快適に老後の生活を送っていただければ幸いであるとおもいます。