| 糖尿病性網膜症について |
| 2003年11月21日放送 双葉厚生病院 眼科 医師 中村 可奈子 |
| 糖尿病とは、血液中のブドウ糖が高くなる病気です。日本で現在糖尿病を患っている方は740万人いるとされております。およそ15人に1人が糖尿病と推定されます。糖尿病はきちんと血糖コントロールがされていれば怖くない病気ですが、放置すると糖尿病性網膜症・腎症・神経症といった合併症をひきおこします。 今日は目について、糖尿病性網膜症を中心にお話ししたいと思います。 眼の奥には網膜という組織があり、これはカメラでいうとフィルムの役割を果たしています。血糖値が高い状態が続くと網膜の血管に負担がかかり、血液の流れが悪くなります。血管が閉塞し、眼底出血が出現すると網膜が痛んでしまいます。フィルムの感度が低下するわけですので、鮮明な映像が見えない状態が起きます。 糖尿病性網膜症になっても、良好な血糖コントロールがされており、定期的な眼底検査を受け、適切な時期に治療を行えば視力低下を防ぐことができます。しかし、初期には自覚症状が乏しいため放置されてしまうこともあるようです。現実には、日本における成人での失明原因の第一位は糖尿病性網膜症であり、毎年4000人近くの糖尿病患者の方が重篤な視力障害に陥っているといわれています。 そこで、血糖値が高いといわれた方や、既に糖尿病と診断された方は定期的な眼科受診をお勧めします。眼底検査を行えば初期の網膜症も発見できます。単純性網膜症と呼ばれる初期の段階では、内科での血糖コントロールにて軽快することもあります。 眼底出血が増えるような場合は、腕から造影剤を点滴して蛍光眼底撮影を行い、より正確に血液の流れの悪い場所を調べることもあります。この造影剤には人によっては一過性に吐き気を催したり、アレルギーをおこすこともありますので、細心の注意をはらって検査を行いますが、気分が悪くなった方は速やかに主治医に申し出てください。 血液の流れの悪い場所ができる前増殖性網膜症となると、レーザー光凝固と呼ばれる処置が必要となります。これは網膜の虚血部位にレーザー光を当てる事によって酸素の必要量を減らし、新生血管と呼ばれる悪い血管が生えてくるのを防いだり、浮腫を改善したりするものです。適切な時期に光凝固を行うと視力低下を防ぐことができ、網膜症の進行も止まります。この処置は、通常外来で数回に分けて行います。 発見が遅れてしまうとさらに進んだ増殖性網膜症になってしまいます。新生血管が生えてしまうと、網膜剥離や硝子体出血を生じます。視力低下が出現し、硝子体切除術と呼ばれる眼の中をきれいに洗ったり、はがれた網膜を元に戻す手術が必要となることがあります。しかし、一度こうした重篤な状態に陥ると、残念ながら手術をしても視力が下がったり、物がゆがんで見えるといった後遺症を残す可能性もあります。 このように糖尿病性網膜症は放置いたしますと視力障害を起こしますが、治療の時期さえ逃さなければ確実に視力を維持することができますので、内科受診とともに定期的な眼科受診をおすすめいたします。糖尿病性網膜症は、糖尿病になってもすぐにおこるものではなく、通常は数年経ってから発症するものですが、血糖コントロールが悪い方や若い方は進行しやすいといわれていますので、より頻回な検査が必要となることもあります。ご静聴ありがとうございました。 |
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