以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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農家の皆さんへ

乳癌検診のお話
2004年02月20日放送
塙厚生病院
副院長 星 竹敏

 皆さんおはようございます。塙厚生病院外科医師の星竹敏と申します。今日は今話題の乳癌の検診についてお話したいと思います。
 日本は癌の検診を胃癌、大腸癌、肺癌、子宮癌、前立腺癌そして乳癌と6つも行っている世界で唯一の検診大国です。このうち乳癌検診は1000人に1人くらいと発見率が低く、一時は検診の意義すら怪しいと言われておりました。しかし、今は乳癌検診の必要性がより強く叫ばれています。
 それには大きな理由があります。まず一つは、乳癌が我が国の統計調査で最近もっとも増えている癌であることです。そして、他の癌と違って、若い40代でもう発症してくる特徴を持っています。そのため、日本では40代、50代の女性の病気による死亡原因の第一位がこの乳癌なのです。女性にとって、この年代は子供の教育期とも重なり、大変大事な時期なので、手遅れにして死んでなどいられないのです。つまり早期発見をして、早期治療をするために検診が必要なのです。

 しかし、検診をして、しこりを触れても、それがはたして癌なのかどうかを判定するには、そのことに熟練した医師でないと難しい点があります。日本乳癌検診学会では、学会認定の専門医師養成に一生懸命ですが、とても間に合っていません。そうすると、今のところ日本では外科医、それも大学で乳腺の研究をしている外科医局の出身の医師が上位の熟練者ということになります。ちなみに、なぜ外科医なのかは、乳癌治療を最初に行った医者が日本でも欧米でも外科医だったという歴史があるからです。つまり、乳癌に関しては、外科医が検診も治療も行っているのが世界の常識なのです。従って、産婦人科医や内科系の医師には熟練者は少ないということになります。

 さて、検診を行う理由はこれだけではありません。不幸にも乳癌が見つかったとき、「これは癌です」と、病名がすぐ告げられる部位なので、患者さんは癌であることを受け止める心の準備がすぐに必要になります。そんな時、「まだ早期ですから、治療をすれば直ります」の言葉があれば、気持ちはずっと楽になります。つまり、早期に検診を受けることは、精神の安定のためでもあります。後は、お金の話で恐縮ですが、乳癌が進行してしまうと、全ての例が手遅れになるわけではありませんが、治療には時間も費用も莫大にかかるようになってきます。それよりは、時間も費用も本人の負担も少なくてすむ予防的検診の方が国民にとって有意義です。

 さて、それでは乳癌検診の受け方をご紹介しましょう。
 乳癌検診は各市町村の役場の主催で、一つの会場での集団検診という形が一番多いようです。皆さんも一度は役場からの乳癌検診の案内を目にしていると思います。また会社の健康診断で一般検診の一つとして病院で行う例もあります。検診回数は年一回を基本にしているところが多いようです。その費用は各自治体や企業が大半を負担しており、本人はただというところが多いようです。ちなみに、厚生連では一人1200円が実際の費用となっております。個人で、乳癌検診をしてくださいと病院に来られれば、これが実際の基本支払額となります。

 次に具体的な検診方法を述べます。まず目で見ますが、検診の第一は触診です。医者が手で触って、乳房内のしこりの有無を見ることです。アメリカなどでは触診では分からないとして、最初から乳房のレントゲン撮影(マンモグラフィーと言います)をしています。日本でもこの方が診断率が高くなるとして、マンモグラフィー撮影装置を積んだ検診車を備える自治体も出てきました。しかし、まだその数は少なく、また撮った写真を正確に読める医者や技師も少ないです。そういうわけで、手間暇、費用まで考えれば、今のところ日本では熟練医師による触診がまだ一番簡単で負担のない方法と考えられます。勿論、診断の確実性が少し落ちることは否定できませんので、あとは本人の希望でレントゲン検査を追加すればよろしいでしょう。もっとも、厚生労働省では、マンモグラフィー撮影を50代ではなく、40代から開始することを推奨する予定だそうですので、近日中に検診を受ける人全員がまずマンモグラフィーを撮る時代がくるかと思われます。

 この触診による検診までを今のところ1次検診と言っております。
 この1次検診でチェックされるのは、乳房内に何か堅めに触れる部分があるときです。通常は年齢とともに、正常な乳腺は脂肪組織などに変わってしまうので、乳房には堅めのものは触れなくなりますが、乳腺症といって、ホルモンの関係で乳腺組織がいつまでも堅く触れる人もいます。そのような場合、乳腺症と小さな癌との判別は大変難しくなります。そこで、そのような方は2次検診になります。
 通常の2次検診は、日本ではまずは、先ほど述べたマンモグラフィーを撮るということになります。レントゲン写真をみて、その所見からしこりが良性か悪性かを見ますが、機械の性能で差が出ることが指摘されていますので、なるべく高性能の機械を備えた施設で検査することが望ましいでしょう。さらに、超音波診断装置(エコーと言います)でも検討を加えます。
 ここまでの検査で、何も所見がなければ、その年のあなたの乳癌検診は終了です。

 次に所見がある時は追加の検査があります。
 まずは、吸引細胞診といって、疑いのあるしこりの部分に注射器を刺し、少量の細胞をとり、これを専門の病理医に癌かどうかを判定してもらう検査です。
 もし、これでも癌かどうかの判断ができないときは、局所麻酔で乳房の皮膚を少し切開し、疑いの部分を少し切り取り、専門の病理医に判定してもらう試験切開術があり、これが、最終決定検査となります。

 そして、全ての検査結果がでそろったところで、患者さんに、発見した時の癌の進行度から考えられる適切な治療法の提案を行います。この提案には、医者の好みなどはなく、乳癌学会の基準に沿っての治療法が幾通りか決まっています。

 尚、ちゃんと検診をして異常なしとしても、3ヵ月後の再診で進行癌という例もあります。しかし、これは見落としではなく、そのような方は残念ながら、進行の早い癌が発生した、稀で、不幸な例で、乳癌になった方100人あたり数名に見られるようです。また、しこりを触れない癌というのも稀にありますので、検診をしたとしても、100%確実ということはなく、心配はつきません。

 また、外科医が乳癌治療の主役と言っても、癌が手術という技術で治るわけではありません。今の治療の大原則は、癌の部分はとりあえず必要最小限を切除するだけで、あとは内分泌療法や抗癌剤および放射線治療が主役という考え方です。それで、再発してくる例は、手術が下手なせいなのではなく、その方の癌細胞の性質と進行度に問題があると考えているのです。
 そして、この癌細胞の性質と進行度から、その方の再発の危険性を今は細かく予測できます。昔はこの予測を本人に伝えることなどできませんでしたが、最近の若い方は冷静にこの予測を受け止めることができるようですので、今後は、アメリカと同じく本当に患者さんと医師が話し合いで治療を選択していく時代が普通になることでしょう。

 最後に、日本乳癌検診学会は、何もなくても40~49歳では年一回の触診と、45歳までに最低1回のレントゲン検査を、そして50歳を過ぎたら2年に1回の触診とその都度のマンモグラフィー検査の併用を勧めています。
 それでは、皆様、今日も元気でお過ごしください。