以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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農家の皆さんへ

他人に及ぼすタバコの害
2004年04月23日放送
福島県農協会館診療所
所長 伊勢 重男

皆さん、お早うございます。
 『今日も元気だ、タバコがうまい』というタバコ会社のキャッチフレーズを聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。タバコを好んで吸う方は実感として共感を覚える方も多いのではないでしょうか。
 しかしここで考えていただきたいのですが、タバコは本当に健康のバロメーターなのでしょうか。今の時代、タバコを吸う吸わないにかかわらず、ほとんどの人が、タバコが健康に対して害があることは知っているようです。ただ、吸っている人々はそれを承知の上自分の責任において吸っているだけなのでしょう。
 タバコの害は非常に多くて、一言では申せません。簡単に申しますと大きく三つに分けられます。
 一つめは肺などの呼吸器系、二つ目は心臓血管系−これらの病気を悪くすること。そして三つ目はガン発生の引金になることが挙げられます。
 このうち特にタバコの害のうちで最も問題となっているのが、最近急増している肺癌の原因に大きく関与していることです。大部分のスモーカーはそれを承知で吸っているはずですが、それだけなら自己責任としてまだ許せます。しかしタバコを吸わない人の健康にも大きな影響を及ぼしていることがもっと問題なのです。
 ここで、一つ興味あるデータを御紹介しましょう。これから述べる話は、米国で行われた肺癌に関する調査で、長期間かつ大規模に行われた調査についてです。
 まず夫婦間で、タバコが健康に関してどのように関与したかを調べるため、数千組の夫婦を二つのグループに分けました。
 一つのグループは、夫がタバコを吸っていて、奥さんが全然吸わないグループ。これをAグループとしましょう。
 もう一つのグループは、夫婦ともにタバコを吸わないグループで、これをBグループとします。
 両方に共通していることは、奥さん達はどちらもタバコを吸っていないことです。
 さて約20年後、AとBグループの奥さん達が肺癌にかかった割合を調べてみました。ここで判明したことは、Aグループの奥さん達の肺癌にかかる割合が明らかに高かったことであります。つまり夫がタバコのみである方の奥さん達は、タバコを吸っていないにもかかわらず、肺癌になる確率が高いことが分かりました。
 以上の結果は、空中にただようタバコの煙が近くにいる吸わない人にも影響を与えるということを証明した有力な証拠となりました。
 他人が吐いて空中にただよっている煙を『副流煙』、その煙を吸ってしまうことを『受動喫煙』といいます。タバコを吸っている人が病気になるのは、仕方ないとしても、吸わない周囲にいる人に悪影響を及ぼすのは困ったものです。
 ですから、アメリカでは私たちからみたらヒステリックに近いと思われるほどの禁煙運動が展開されてきました。そしてこの運動がようやく実を結び、肺癌の死亡が減少に向かっているそうです。
 アメリカでは一般のレストランでも、法令で禁煙ですし、分煙するなら別に独立した部屋を用意しなければなりません。日本のレストランでは、禁煙席といっても特別に仕切られた席は少ないようです。
 ここで、世界のタバコの箱に表示されている警告文をみてみましょう。日本のタバコの箱に書かれている文は『あなたの健康を害するおそれがありますので、吸いすぎに注意しましょう』とだけ書いてあり、あたかも吸いすぎなければ大丈夫と受けとられかねない表現になっています。
 一方、EU・ヨーロッパ連合の表示では、はっきりとこう書いてあります。『タバコはガンや心臓病の原因である。妊娠中の喫煙はあなたのお腹の中の子どもに有害である』と明記してあります。
 タバコの害についていうなら、何十と挙げることができます。受動喫煙によって心臓病が2割増えるというデータもありますし、道路でタバコを吸っている人でも、10m位近くによると煙の影響を受けるという報告もあります。
 最後に少しショッキングなニュースをお伝えします。
 一本のタバコがどの位寿命を縮めているか研究した学者がいます。一本のタバコを吸う毎に寿命が縮む時間はどの位か、次の三つから一つを選んでください。(1)30秒、(2)3分、(3)7分。如何ですか。その学者の研究によると正解は(3)7分でした。1日20本吸ったら合計140分寿命を短くしている計算になります。つまり、喫煙を始めた年齢や止めた年齢にもよりますが、約7年から13年の寿命がタバコに関係する病気で失われていること − このことは案外知られていません。
 次に経済的な観点から考えてみましょう。1日1箱20本、平均280円払うとして1ヶ月で8,400円、一年間で10万800円タバコ代を払っています。もし吸わないで10年間貯金するとしたら、約101万円貯まる勘定になりますね。
 まさにタバコこそ百害あって一利なしです。自分のためだけでなく、他人のためにも、ぜひ禁煙ではなくて『断煙』−タバコを断つという強い意志を持っていただきたいと思います。最近は禁煙、断煙外来を行っている病院や医院も増えてきましたので、タバコを止めたくても止められない方は、ぜひそこで相談することをおすすめします。