以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
JA福島厚生連からの最新の情報は、TOPページからご覧ください。



農家の皆さんへ

マンモグラフィーを併用した乳癌検診について
2004年05月21日放送
白河厚生総合病院
外科 科長 土井 孝志

 わが国において、がんは1981年以来死亡原因の第1位となっています。
 その中で乳癌は現在、わが国では女性において最もかかる人数の多いがんであり、年間約3万5千人が乳癌になり、約1万人が亡くなっています。
 乳癌に罹る人の数は1975年時点で10万人あたり21.7人でしたが1988年では10万人あたり43.6人と、23年間で約2倍に増加しています。そして今後も乳癌に罹る人の数は増加すると予想されています。また乳癌でなくなる人の数も増加しており、2002年には10万人あたり10.8人が乳癌で亡くなっています。
 一般に癌というと年齢が増加するほど罹る人の数も増加すると思われがちですが、乳癌の場合じつは40歳代の人が最も多いのが特徴です。つまり家庭の中で主婦として大きな役割を担い、成人前の子供をもつ女性が数多く乳癌にかかってしまうのが今の日本における乳癌の現状です。亡くなる人の数をみても65歳未満の比較的若い世代では女性の癌死亡の第1位となっています。
 乳癌で亡くなる人の数を減らすために視触診による乳癌検診が30歳以上の女性を対象にこれまで行われてきました。しかししこりがはっきり触れるような乳癌の中には既にかなり進んでしまった乳癌もあり乳癌による死亡率をより減少させるためにはしこりが触れるようになる前の自覚症状のない段階で発見することが大切になってきます。
 最近厚生労働省では、乳癌検診のあり方について見直しを行いましたが、乳癌検診は診察による視触診に加えて乳房を撮影するレントゲン写真であるマンモグラフィーを併用することで乳癌による死亡率を減少させることができると報告されました。
 マンモグラフィーは、触診では触れることができない小さなしこりを写し出したり、癌にともなって生じるごくこく小さな石灰化とよばれる病変を写し出すことが可能で、より早い段階の乳癌を発見するのに有効な方法です。
 レントゲン撮影を併用することで、放射線を浴びることを心配する方も多いようです。しかし、実際に検診に際して浴びる放射線の量はごくわずかな量で、具体的には東京からニューヨークへ飛行機で行くときに浴びる自然放射線の量の約半分程度で健康への影響はほとんどありません。また、検診によって得られる利益、つまり乳癌による死亡率の減少は、被爆によるリスクよりはるかに大きいことも実証されています。
 具体的には、40歳以上の女性を対象に2年に一回、マンモグラフィーを併用した検診を行うことが今後の乳癌検診のあり方として国から推奨されました。 30歳代の女性については今のところマンモグラフィー併用乳癌検診を行っても乳癌による死亡率を減少させることはできないとして対象から除外されました。
 またさらに検診による乳癌の死亡率減少をめざして、超音波検査を併用した検診法の研究も行われています。
 2002年度マンモグラフィー併用による乳癌検診を実施している市町村は約48%と半数に満たない状況でしたが今回の厚生労働省からの報告によってマンモグラフィー併用検診をまだ導入していない市町村でも本年度以降導入が進むものと思われます。
 乳癌検診を乳癌による死亡率の減少につなげるためには、検診の受診率を高めることが何より必要となります。アメリカでは政策によって乳癌検診の受診率を向上させることで、乳癌による死亡率を減少させることに成功しました。約20%であった検診受診率を7年間で約60%に上昇させています。日本の乳癌検診の受診率はまだまだ低いのが現状です。2002年度わが国の市町村が実施した乳癌検診の受診率は12.4%、そのうちマンモグラフィーによる検診受診率はわずか2.1%と依然として低い状況にあり、乳癌による死亡率の減少のためにはさらなる受診率の向上が望まれるところです。
 乳癌検診を受けない理由として、恥ずかしいと思ってしまい受診をためらうことや、自分には乳癌は関係ないと思っている女性が多いことがあげられます。しかしわが国では女性の一生を通じてみた場合に慨して30人に1人以上が罹る病気で、けっして珍しい病気ではないことを知っていただきたいと思います。
 乳癌検診を受診することのメリットとしては、乳癌で死亡するリスクを減少させること以外にも、乳癌を早期に発見すれば乳房を温存する手術を受けられる可能性が高くなることもあげられます。
 早期に発見すれば手術によって高い確率で治る可能性が期待できる乳癌ですが、進行してしまうと骨・肺・肝臓などへの転移の確率が増加し、手術に加えて抗がん剤などによる治療を余儀なくされてしまい、同時に多額の医療費を負担せざるを得ないこともあります。
 マンモグラフィーを併用した検診を受診することで、乳癌で死亡するリスクを減らすことができることを皆さんに理解していただき、今後より多くの女性が受診されることを願っております。