以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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農家の皆さんへ

介護保険における住宅改修
2005年1月18日放送
白河中央在宅介護支援センター
円谷 義盛

 介護保険制度がスタートし、これまでの高齢者の介護問題は大きな転換期を迎えています。特に在宅介護に関わる上では、住宅の担う役割は一段と大きくなります。たとえ寝たきりになっても自分の家で一生暮らしたい、近隣の人たちと触れ合いながら暮らしたい、というのが多くの高齢者の思いではないでしょうか。しかし、最も多くの時間を過ごす家自体が高齢者の生活に向かないことが、元気に暮らしたい、という高齢者の思いを妨げてしまっている場合もあります。従来の日本の住宅では身体機能の低下した高齢者が住宅内を自由に移動できない、これまでと同じ生活の継続ができないという状況を作り出しています。住宅を改修し、住みやすい環境に整備することは、介護の一環として重要な意味を持っています。そこで今回は介護保険での住宅改修を有効に利用するためのアドバイスをさせていただきます。
 まず初めに、住まいを見直して見ましょう。高齢者の日常生活で、よく使う場所を思い起こしてみてください。寝室からトイレ、浴室、居間、玄関が思い浮かびます。場所によって、起きる・寝る・立ち上がる・座る・歩く・止まる・片手でドアを開ける、というような、場所ごとの行動はほぼ決まっています。それぞれの場所では、どのような動作をするでしょうか? 力の弱くなった高齢者の毎日の生活の中で、次の動作に入るために力を必要とする場所や、支えがないと転倒しやすい場所はどこか考えてみましょう。和風の家には敷居があったり、部屋と廊下の床位置が違うなど、細かい段差がたくさんあります。歩幅が狭く、すり足で歩く高齢者にとっては、小さな段差でもとても危険です。高齢者の行動を足元から一度チェックしてみましょう。長い間磨いてきた木材の床。元気な時に建てた近代的な家の床。ツルツル滑ることが美しい床であるという美意識があった時期がありますが、そんな床も高齢者には危険です。和式の家でも、トイレ、浴室、玄関なども、けっこう開き戸が使われています。高齢者がひとりでドアを開けることができますか? ドアノブが回しにくかったりしませんか?開けた際に身体が不安定になっていませんか? 和式便座での排泄には、またぐ、しゃがむ、立つ、という不安定な行動が必要です。それに比べて、洋式便座はかなりストレスが少なくて済みます。また、夜トイレを使う場合、電気はつけやすいですか? ドアは開けやすいですか? その辺もチェックしてみましょう。
 続いて、住宅改修は何のために必要なのかを考えていきたいと思います。
 一番目として、事故防止のため、ということが挙げられるでしょう。高齢者は多くの時間を家の中で過ごしています。しかし安全であるはずの家の中のちょっとした段差でも、つまづき、転倒します。高齢者が転倒し骨折すると、回復が長引きそれがもとで寝たきりになる事も多く、介護する家族の側の悩みや負担も増します。高齢者自身と家族のために、住まいを見直し、危険な箇所を改修して、転倒事故を未然に防ぐ必要があるのです。
 二番目として、自立支援のため、ということが挙げられます。介助の手が必要な身体になると、ついつい動く事をひかえがちになります。それが重なると、ますます体力が衰え、動けない身体になっていきます。動けない原因は身体ばかりでなく、住環境と生活が合っていないことにあるのかもしれません。高齢者が動きやすいように住まいを整えることで、高齢者自身でできる事が増えて、行動範囲も広がり、自立度がアップします。
 三番目として、介護者のゆとりのため、ということが挙げられます。病院や施設などは看護や介護がしやすいように建てられていますが、ほとんどの住宅は介護のことなど考えずに建てられています。介護しにくい住環境が原因で、介護する家族に不必要な負担がかかると、元気であるはずの家族が疲れきってしまいます。介護しやすい家に住まいを整えることで、高齢者自身もできることが増え、介護する家族にもゆとりが生まれます。家族のゆとりは、高齢者にも良い影響を与えます。
 介護保険制度においては、居宅介護住宅改修として小規模な住宅改修の費用が支給されます。改修内容としては、手摺りの取り付け、段差の改修、滑りの防止・移動の円滑等のための床材の変更、開き戸から引き戸への扉の取替え、和式便座から洋式便座への取替えが該当となっており、一つの住居において改修費 20万円までは自己負担が1割で済みます。 実際の住宅の改修の計画は次のようなことに配慮することが必要です。まず初めには、高齢者自身やご家族が、身体状況を十分認識していない場合には、ご家族が医療や福祉の専門家と良く相談し、まず身体状況について認識しておきましょう。
  次に、将来、もっと身体が動かなくなった場合、どのような介護が必要なのか、どのような住宅改修が必要になるかを予測して計画しましょう。さらに、高齢者自身も打ち合わせに参加することが重要です。業者との打ち合わせの際に、実際に使う高齢者が、その場で日常、必要な行動を行い、工事の必要な場所を確定することが必要です。介護保険が使えるという事で業者に頼んだら、その他のリフォーム工事も強く勧められ、結局、高額な工事になってしまった、というケースが増えています。業者に不安がある場合や納得がいかない場合は、見積りの段階で住宅改修業者を変える事も可能ですので、頼む側も賢く見きわめて、納得のいく住宅改修をしましょう。住宅改修には高齢者の身体状況や生活を知っている専門の建築士等の意見も不可欠となります。それとともに、前にもお話ししましたが、医療側のサポートを受ける、ということも大変重要です。将来的な身体機能の変化の予測を入れながら、ご本人、ご家族が担当のケアマネージャーとともに、理学療法士、作業療法士などのリハビリテーションの専門家からアドバイスを受けていくことも必要となってくるでしょう。