| Helicobacter pylori菌について |
| 2006年2月24日放送 塙厚生病院 内科医師 鈴木 英二 |
| 塙厚生病院内科に勤務しております鈴木英二と申します。 本日はHelicobacter Pyloriについてお話を致したいと思います。 ところでHelicobacter Pyloriとはいったい何でしょうか?これは胃に生息する細菌の名前です。そしてこの菌が胃炎や胃・十二指腸潰瘍の発症と非常に関連があることがわかってきました。 そもそも、胃は食物の消化を司る臓器であり、強烈な酸を産生するが故、細菌は生息できないと考えられてきました。しかし1983年にオーストラリアのマーシャルとワーレンという2人の医学者が人間の胃粘膜からHelicobacter Pylori菌(以下ピロリ菌と呼びますが)を分離することに成功しました。形態的には螺旋型で片方の端に4から6本の鞭毛という毛のような構造を有しコイル状の運動をします。どうして胃内での生息が可能かというと胃粘膜を保護する粘液という層の中に存在することそしてウレアーゼという酵素を分泌して尿素という物質を分解し、二酸化炭素とアルカリ性であるアンモニアを産生し、アルカリのバリアで自分自身を保護しているためと考えられます。 ピロリ菌の感染経路は経口感染つまり吐物や糞便に混ざって体外に排泄され再び水などとともに飲み込まれる経路を取ります。また、小児期での感染がほとんどであり成人での初感染はまれです。日本では40歳以上の方での感染率が高いですが、これは小児期の衛生環境と関係があるようです。衛生環境が改善し若年層では感染率の低下が認められますが今後はピロリ菌に感染した母親から子への感染が重要な経路と考えられます。 さて、ピロリ菌は胃粘膜に生着すると菌自体が産生するアンモニアやその他毒素による作用、また付着した菌を排除しようとする生体反応により胃の障害をひきおこします。粘膜が障害され粘液の産生が低下し炎症が生じると胃炎さらに程度がひどくなれば潰瘍が生じます。しかし、感染者のすべてでこれらがおこるわけではないようで、実際に感染者で胃・十二指腸潰瘍を発症する人は2~3%程度といわれています。ですから、感染者においてすべて除菌しなければいけないというわけではありません。2003年に日本ヘリコバクター学会から発表された治療方針ではピロリ菌の除菌の適応疾患をランクに分けて示しています。これは臨床試験などの結果から提唱されたものです。この中でランクAのピロリ菌除菌がすすめられる疾患としましては胃潰瘍・十二指腸潰瘍とリンパ腫の一部が挙げられています。特に十二指腸潰瘍の患者さんではほぼ100%でピロリ菌に感染していると言われています。胃・十二指腸潰瘍の患者さんでピロリ菌が陽性の方は積極的に除菌が勧められます。また、胃がんとピロリ菌の関係については検討されてきますが、関係を示唆するデータは散見されるもののはっきりとした結論には至っていません。 ピロリ菌に感染しているかどうかを知る方法は色々あります。内視鏡検査時に組織を採取して行う方法では顕微鏡による検査、培養による検査、キットを用いた検査、内視鏡検査以外では、特殊な薬を内服した後に息を調べる検査、血液の抗体を測定する検査、便を用いた検査などです。いずれも一長一短があります。 ピロリ菌の除菌に関してですが、2000年の日本ヘリコバクター学会では多くの臨床試験の検討の結果プロトンポンプインヒビターと呼ばれる胃酸を抑制するお薬でありますランソプラゾールにアモキシリン、クラリスロマイシンという2種類の抗生剤を加えた3剤併用療法を1週間行うことが第一選択となりました。この治療にて実際は85%前後で除菌が得られます。しかし、15%前後で除菌が得られないことになります。この場合は同じメニューで再除菌することもありますが、こういった場合では使用している抗生剤に対し効きが悪いことが多く除菌が得られることは少ないようです。今後の検討課題となっております。除菌に成功すれば従来潰瘍の再発予防のために服用していた酸分泌抑制剤は服用する必要がなくなるといわれています。しかし、胃腸の健康を保つために従来から言われている食事内容への注意やストレスをためないことそして禁煙などは必要になります。 最後に前述しました除菌療法での副作用の発生ですが、国内データでは50%程度と高値です。しかし、その内訳を見てみると軟便・下痢・味覚異常といった消化器症状や発疹など軽度なものがほとんどです。途中で中止してしまうとお薬に対して抵抗を示す菌(薬剤耐性菌)を作りかねないので、軽度の場合は整腸剤などを併用しつつ1週間内服を続けていただきます。しかし、まれにはアレルギー機序による全身性の発疹や血圧低下、血便などが認められる時があります。こういった時は内服を中止し医療機関をすぐに受診してください。 |
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