| 糖尿病予備軍について |
| 2006年3月24日放送 双葉厚生病院 内科医師 林 晃 |
| 今日は糖尿病予備軍についてお話しします。最近では生活習慣病という言葉を耳にすることも多いと思います。食べ過ぎ、運動不足になりがちな現代の生活習慣のもとでは、高血圧、糖尿病、高脂血症などの病気が、増えています。その中でも糖尿病の増加が大きな問題となっています。 最近の調査では、糖尿病の患者さんと糖尿病を強く疑われる人が、合わせて740万人もいます。さらに、まだ糖尿病になっていない糖尿病予備軍といわれる糖尿病の可能性が否定できない人が880万人もいると推定されています。今後ますます糖尿病患者さんが増えることが確実な状況です。 さて糖尿病予備軍とは、将来的に糖尿病になりやすい人々です。まず糖尿病の遺伝があります。両親、兄弟が糖尿病であれば、いずれ糖尿病になる危険度はかなり高くなります。両親の世代と比べて子どもの世代では脂肪の摂取量が増加し、自分の足で歩くこともだいぶ少なくなっているはずです。 遺伝に加えて糖尿病になりやすい環境のため親子とも糖尿病の患者さんもよく見られます。子供の糖尿病も増えており、今では小学生から糖尿病の患者さんもいます。 年齢も高くなれば糖尿病の発症の危険度が高くなります。 さらに肥満、糖代謝異常、高血圧、脂質代謝異常、妊娠糖尿病などが糖尿病予備軍に多く認められます。 今日は主に、糖代謝異常と肥満についてお話します。まず糖代謝異常があるかどうかは経口ブドウ糖負荷試験という検査を行います。糖分を含んだ甘い水を飲んで30分毎に採血をして2時間後までの血糖と血中のインスリンを測定します。検査のために飲む水は甘いので飲みやすくするために炭酸が入っています。血糖の上がり方で正常、耐糖能異常、糖尿病に判定されます。 正常では口から飲んだ糖分が胃を通って小腸に入り、吸収されると血糖が少し上がります。すると、すい臓から血糖を下げるインスリンがでてきて、血糖が上がらないように調節されています。 経口ブドウ糖負荷試験で2時間後の血糖が200mg/dlを越えると糖尿病と判定されます。 耐糖能異常では、血糖は正常より上昇しますが、糖尿病ほどには上昇せず、正常と糖尿病の間となります。耐糖能異常と判定された人は糖代謝異常がある糖尿病予備軍となります。 経口ブドウ糖負荷試験で正常の人が糖尿病になる割合は10年で15%と、1年あたり1.5%となります。それに比べて、耐糖能異常の人からは10年で55%と、半分以上の人が糖尿病になってしまい、かなり糖尿病になる可能性が高いといえます。 しかし糖尿病の予防を目指した試験の結果から、1から2キログラム程度の体重の減少が、糖尿病発症を60%抑えたとの報告があります。したがって、体重の減少と生活習慣の改善が、糖尿病の予防に有効なことが明らかされています。また、体重の減少で血圧も下がりました。肥満の改善には糖尿病の予防も含め他にもいろいろと良い事があるわけです。 次に肥満についてお話します。 摂取エネルギーが消費エネルギーより多ければ、あまったエネルギーは脂肪として蓄えられ、肥満になっていきます。 脂肪組織1キログラム中の脂肪は、約800グラムです。脂肪1グラムは9キロカロリーのエネルギーとなりますから脂肪組織1キログラムは9かける800でだいたい7000キロカロリーとなる計算です。 よく患者さんから水を飲んでも太ると聞かされますが、水そのものにはエネルギーがありませんから、太らないはずです。 最近では内臓脂肪型肥満という言葉も聞かれたことがあると思います。 隠れ肥満とも言われ皮下脂肪より、腸の周りなど、おなかの中に脂肪が多いことで区別されています。内臓脂肪型肥満は動脈硬化性疾患、心筋梗塞、脳梗塞などの発症率が高いことが明らかにされています。 肥満の治療においては、1日の摂取エネルギーを消費エネルギーより少なくする必要があり、さらに長期間続けられないと体重も元にもどってしまいます。1日の摂取エネルギーを減らす食事療法のみだと主に筋肉が減ってしまい、うまく脂肪を減らせません。可能な限り運動療法を併用し筋肉の減少を防ぐ必要があります。 食事療法により、摂取エネルギーを減らすと、人間の身体は消費エネルギーを減らすように変わります。そのため食事療法を開始した最初のうちは体重が減りますが、1から2週間たつとあまり体重が減らなくなることになります。食事の内容については、炭水化物とたんぱく質のバランスを考え、脂肪は抑えることになります。ビタミン、ミネラルの不足にも注意が必要です。 内臓脂肪型肥満の人たちの食習慣によく見られるものには、満足するまで食べる。緑黄色野菜を好まない。甘い清涼飲料水、スナック類、アイスクリームを好む。間食、夜食が多い。料理に砂糖を多く使う。などがあります。 肥満にとってよい食事、悪い食事とはどういうものかを、はっきり認識して、自分の食生活に生かすことができる知識と行動が必要です。食べ方の工夫として早食い、かため食いにならない。最初に野菜を十分に良くかんで食べる。欠食をさける。などがあります。 運動療法では、まず1日300キロカロリーを目安とし、有酸素運動である散歩、水中歩行、水泳、ジョギングなどを生活習慣のなかに組み込み長期間続けられるようにすることが重要です。 糖尿病は増え続けており、現代の生活においては誰でも糖尿病になってしまう可能性があるといってもよさそうです。生活習慣を修正し、わずか2キロぐらいでも体重を減らすことにより糖尿病の予防効果が期待できます。 |
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