| 更年期障害とホルモン補充療法 |
| 2006年5月19日放送 白河厚生総合病院 産婦人科部長 山内 隆治 |
| 更年期障害とホルモン補充療法についてお話しいたします。女性はだれでも年をとるにつれて卵巣の働きが低下し、女性ホルモンの分泌が減少して、妊娠・出産の能力が衰えてきます。更年期から老年期に向かうわけですが、その間、からだや心に女性ホルモンの低下に伴う、さまざまな症状が現れます。なかでも大きな変化が閉経で、順調だった月経の周期が短くなったり長くなったり、月経の量も多くなったり少なくなったりして乱れてきて、月経が1年以上こなくなると閉経です。通常45才から55才までに閉経しますので、この時期が更年期の時期に相当します。更年期に入って月経が不規則になるころから、女性ホルモンは徐々に低下し始め、月経が無くなると女性ホルモンは急激に低下し、ほぼ消失してしまいます。この女性ホルモンの低下に伴い、多くの女性に程度の差こそあれ、のぼせ・ほてり・発汗・全身倦怠感・肩こりなどの更年期症状に加え、帯下・微小出血など膣粘膜が薄くなることによる症状、不眠・皮膚の老化・物忘れ・さらに腰痛・膝の関節痛・動脈硬化症などが現れてきます。これらの症状は年をとったから、つまり老化現象からではなく、閉経により女性ホルモンが低下したために起こってきたものです。45才から55才の婦人が月経異常に加えて、ほてり・のぼせ・冷え・発汗異常・動悸等の自律神経失調症状が出現すれば、更年期障害の始まりです。自律神経失調症状の中でも、「のぼせ・ほてり」が最も代表的な症状です。典型的な「のぼせ・ほてり」とは、「何の前触れもなく、まず胸部に熱感が生じ、瞬間的に首や顔に広がって、首や顔か紅潮し、しばしば原因もないのに汗がふき出すように流れる現象や、動悸・不安感を伴う」一連の症状をいうものです。「のぼせ・ほてり」の発作時には、周囲の人が何も暑いと感じていないのに、本人は独り「暑い、暑い」と言って窓を開けたり、暖房のスイッチを切ったりします。発作の持続時間は、おおむね1~2分で、日に数回以上を訴えることもあります。時と場所を選びませんので、夜間にもしばしば出現し、寝汗や睡眠障害の原因にもなります。症状の発現程度は個人差が大きく、何も訴えがない人もいます。統計によりますと、閉経婦人のおよそ60%~70%が、「のぼせ・ほてり」を自覚するといわれています。このような症状が出現する理由は、まだすべて解明されていませんが、更年期に入って女性ホルモンの一種である卵胞ホルモンの分泌が低下すると、脳の視床下部にある、自律神経の中枢の調節機構が乱れるために生じるものと考えられています。自律神経失調症状は、卵胞ホルモンの分泌低下が原因で起こりますので、卵胞ホルモンを補えば症状は改善します。このように卵胞ホルモンの分泌が低下した更年期婦人に、同一活性を有するホルモン剤を補充投与する方法をホルモン補充療法といいます。ホルモン補充療法の効果ですが、一般的にはホルモン補充療法を開始すると、早い人でおよそ2週間で症状の著明な改善が見られ、3ヶ月もすれば、ほとんど症状は消失してしまいます。しかし、投与を中断することにより再び症状が出現するので、多くの場合、1~2年程度使用し、症状の推移をみながら終了することになります。その他、不眠・イライラ・不安感・憂うつ感なども軽くなりますし、関節痛や知覚異常・動悸・皮膚のトラブルなど、さまざまな症状が改善されます。また、更年期後の女性に多いのが、骨粗しょう症です。これは、骨からカルシウムが失われていくトラブルで、年をとるにつれて進行します。骨量が減り続けると、腰が曲がったり骨折しやすくなって、日常生活に差しさわりが出てきます。ホルモン補充療法は、カルシウムの流出を防ぎますから、骨粗しょう症の予防効果と治療効果もあります。その他、女性ホルモンにはさまざま働きがあります。更年期女性の健康を守るためにホルモン補充療法を上手に利用して下さい。ホルモン補充療法は、メリットの大きい治療法です。それだけに安全に長く続けたいものです。そのためには、定期検診を必ず受けるようにしましょう。定期検診では、更年期障害などの自覚症状・出血の様子・血圧・肝機能検査・血中のコレステロール値・骨量測定・子宮頚ガン・子宮体ガン・乳ガンなどの検査を行います。これらの検査を定期的に受けていれば、ガンの早期発見にもつながりますし、生活習慣病もチェックできます。閉経後の健康管理に大変役に立ちますので、積極的に定期検診を受けてください。 |
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