以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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農家の皆さんへ

『発症すぐさま治療 Time is Brain』脳卒中を疑ったらまず「119」番通報
2007年5月18日放送
白河厚生総合病院
脳神経外科 永山 徹

 皆さん、おはようございます。今朝は、『発症すぐさま治療 Time is Brain』 -脳卒中を疑ったらまず「119」番通報-をしましょう、という題で、お話しをさせて頂きます。 

  中気になる、あるいは中風になると表現される脳卒中ですが、漢字では 脳に、にわかに中る、と書きます。皆さん御存知のように、先程まで元気だった人が、急に意識が無くなったり、手足に力が入らなくなったり、ひどいと突然死んでしまったりするために、昔から恐れられている病気です。
 現在、脳卒中の死亡率は、癌、心臓病についで3番目と、昔に比べて低下したものの、脳卒中にかかってしまう人の数はさほど減少してはいません。後遺症として、意識障害、半身麻痺、言語障害などを残すことも多く、生活習慣病の中では、依然解決すべき重要な疾患です。

 脳卒中の原因は、脳の血管の障害です。脳卒中には、血管が詰まって脳細胞に十分な血液が送れないことにより脳が障害される脳梗塞と、血管が切れて脳が壊れる脳内出血や、血管にできた瘤が破れて出血するくも膜下出血などがあります。くも膜下出血は突然の激しい頭痛で発症することが多く、発症すればその半数の人が命を奪われてしまう、恐ろしい病気です。いずれの場合も、まずは「119」番へと電話をかけて、救急車で最寄りの脳卒中専門医がいる病院へと向かうことが重要かと思います。

 今日は重大な病気である脳卒中の、その約7割を占める「脳梗塞」に焦点をあててお話しをすすめていきたいと思います。脳梗塞ですが、血管の詰まり方の違いにより、脳血栓症と脳塞栓症とに分けられます。まずは脳血栓症ですが、脳の血管自体が動脈硬化により、壁に貯まった脂肪などのために、徐々に細くなり、最後には詰まってしまうものです。一方、脳塞栓症とは心臓または首の動脈にできた小さな血や脂肪の塊が、脳の血管まで流れてきて、血管を塞いでしまうために起こるものです。
 一昨年の3月、プロ野球界のスーパースターである長嶋茂雄元巨人軍監督が脳梗塞で倒れたのは衝撃的な出来事でした。ある朝突然、心臓の血栓が動脈を介して左大脳半球の脳の動脈へ運ばれ、そこで動脈を塞いでしまう「脳塞栓症」が発症したのです。失語症と右片麻痺が瞬時に現れました。あとで問題になったのは、何故お迎えの運転手さんがすぐに救急車を呼ばなかったのか、ということです。運転手さんに脳卒中の知識があれば、直ちに119番し、脳卒中専門医のいる専門施設への搬送を頼んだことでしょう。
 そこで重要なことは、今回の題名の『発症すぐさま治療  Time is Brain.』です。Time is Brain.は日本語で時は脳なりと言う意味で、「時は金なり、Time is Money.」に意味をだぶらせた言葉です。正確にはTime loss is Brain loss.、つまり時間が過ぎれば脳細胞は死ぬ という意味です。虚血となった脳、すなわち血液が届かなくなった脳は最長でも3時間以内に血流を再開しないと、脳細胞が死滅し元に戻れなくなります。脳梗塞が完成し、症状が固定されます。

 当病院は脳神経外科が中心となり、脳卒中の専門施設に認定されました。可能な限り24時間体制で活動しております。1年前からはt-PA、組織プラスミノ?ゲンアクチベーターという脳に詰まった血栓を溶かす薬が、脳梗塞の急性期使用に認可されました。まずは発症2時間以内に来院することが最低条件です。脳卒中は突然起こります。意識障害、麻痺、失語は見た瞬間に119番通報し、「救急車で脳卒中専門施設に直接来院する」ことが脳細胞ひいては機能や命を救うことにつながる可能性が高くなります。

 日本は高齢化が進みつつあり、脳塞栓症の主な原因である心房細動という不整脈の合併率は年齢と共に上昇し、それに連れ脳塞栓症も増えております。「知識」が「機能」を、そして「命」を救います。脳卒中も「時間との勝負」の時代へと突入しております。