
| ウイルス性肝炎と臨床検査について |
2009年1月23日放送
白河厚生総合病院
検査科 山田 元夫
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肝臓の病気の中に肝炎というものがありますが、その原因には飲酒によるアルコール性のもの、抗生物質や漢方薬のような薬によるもの、自己免疫性疾患などがありますが、近年では特にウイルスが原因による肝炎が問題となっております。
肝炎を発症するウイルスは一般的にはA型からE型まで5種類が知られており、A型とE型は飲食物を介して口から感染し、B型、C型は感染者の血液や粘膜を介して感染します。
今回はこの中で血液や粘膜を介して感染するB型肝炎とC型肝炎について概略と肝炎検査の歴史についてお話をさせていただきます。
まず、B型肝炎ですが、食べ物から感染するA型肝炎以外に、手術や輸血をした後に肝炎が発症し、急性化や劇症化をおこしたり、慢性化し肝硬変や肝細胞癌へ進展するものもありますが、原因は十分に解明されていませんでした。
1964年オーストラリア原住民の血液中からB型肝炎をおこすウイルス抗原が発見され、その抗原はウイルス粒子の表面タンパクであることがわかりました。
この後、今から30年くらい前にB型肝炎を発症させるウイルス抗原を検出する測定法が開発され病院でB型肝炎ウイルスの検査ができるようになってきました。現在ではHBs抗原と呼ばれB型肝炎の臨床検査項目として測定されています。
しかし、当初の検査法はウイルス蛋白の一部を捕らえるのみで、感度的には十分とはいえませんでした。現在では抗体に酵素や蛍光色素などの標識をつけてウイルス蛋白と結合したものを測定する方法が主流となり検査感度は格段に向上しております。
B型肝炎ウイルスは血液や粘膜を介して感染することから母子感染・性交渉・医療行為などから感染すると考えられています。
B型肝炎ウイルスに感染した患者数は全世界で3億5千万人といわれ、わが国での感染率は約1%強と考えられており、人口数から換算すると150万人程度と推定されています。
B型肝炎の臨床経過はいくつかあり、一時的に症状が出現し回復するもの、早期に肝硬変に進行し、さらに肝細胞癌にまで至る例、肝細胞に含まれるトランスアミナーゼと言われる酵素の値が正常で、肝炎の症状がないのに健康診断などでHBs抗原が見つかるような例などがあります。
これらの違いに関してさまざまな研究が進められていますが、ウイルスの遺伝子型が関与しているという報告があります。遺伝子型とは同じB型肝炎ウイルスでも兄弟のように似ているところと違ったところがあるという意味に理解してください。
このため肝炎検査は治療方針の決定なども含めてウイルスの遺伝子型の検索が不可欠です。B型肝炎ウイルス遺伝子型はA型からH型まで8つのタイプに分類されていますが、われわれ日本人はBタイプが約12%、Cタイプが約85%といわれております。
感染リスクの高い職業には他人の血液に触れることが多い救急隊員や医療従事者などですがB型肝炎の場合はワクチンを接種することにより感染を予防することができるようになっております。
次にC型肝炎ウイルスについてお話します。ウイルスによるA型肝炎・B型肝炎以外の肝炎については原因がわからず、この肝炎には第三のウイルスが関与しているのではないかと考えられていました。
1980年代の後半にC型肝炎ウイルスの遺伝子が同定されC型肝炎に関するウイルスの存在が明らかになりました。初期のC型肝炎検査はウイルス感染後に産生される抗体を測定していました。第一世代といわれるこの測定法での検出率は60%程度でしたが、改良が進んで第三世代と呼ばれている現在では95%以上のC型肝炎を血清検査で診断することができるようになっています。
肝炎の症状がなくC型肝炎ウイルスを保持している人をウイルスキャリアと言いますが、C型肝炎の患者さんは、この人達を含めて全世界で1億7000万人、国内では約200万人いると推定されています。C型肝炎ウイルスもB型肝炎ウイルスとほぼ同じ感染経路をとりますが、50歳代以降ではC型肝炎の感染者の割合が多くなっております。これはウイルス感染という概念がなかった頃における予防注射の針の使い回しなどの使用法が原因ではないかといわれております。なお、C型肝炎の場合は高率に肝硬変に移行し肝癌が発生することが知られています。
C型肝炎の治療にはインターフェロンと抗ウイルス剤を併用したウイルス駆除が行われていますが、その治療効果はC型肝炎ウイルスの遺伝子型によって違っているようです。
わが国におけるC型肝炎ウイルスの遺伝子型はⅠ型とⅡ型に大きく分かれⅠ型と言われるものが約70%を占めています。このⅠ型はインターフェロン療法に抵抗性でしたが、インターフェロンの改良と抗ウイルス剤との併用により近年では格段に改良しています。
治療効果の判定には血液中のウイルス消失の確認が必要ですが、C型肝炎検査は抗体検査が主流で、ウイルスが消失しているか判断できませんでした。近年になって遺伝子学的な検査法が登場し、ウイルス遺伝子を高感度に検出できるようになり、治療効果の判定がより正確になりました。
また、インターフェロン療法においてウイルス量と遺伝子型が判明している場合は治療期間の短縮や延長などの重要な指標となり、治療効果の予測ができるようになってきました。
血清検査の原理は肝炎ウイルス蛋白とウイルス感染により体の中で産生された抗体との特異的な反応に基づいています。そのためウイルス感染後、抗体が産生されるまでの期間に、抗体検査をしても感染の事実をつかめないことがあります。この期間を抗体陰性期といい、輸血後、ごくまれに肝炎が起こる場合がありますがこの抗体陰性期に採取された血液を使用した可能性が考えられています。この期間をできるだけ短縮するためウイルスの遺伝子学的な検査法が、輸血による感染を未然に防ぐ目的で行われています。
肝臓は沈黙の臓器といわれ、軽度の肝炎やウイルスキャリアでは症状が現れることは少ないといわれています。症状のないB型、C型肝炎ウイルスに感染している患者さんの場合は人間ドックや健康診断の時に肝炎ウイルスの感染を指摘され、医療機関を受診することが多いようです。肝炎検査の経験のない方や肝臓に不安を感じている方は一度肝炎検査を受けてみてはいかがでしょうか。
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