以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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農家の皆さんへ

骨粗しょう症と骨髄腫について
2009年5月22日放送
白河厚生総合病院
血液内科部長 三田 正行

 皆さんおはようございます。白河厚生総合病院 血液内科の 三田と申します。
 今日は、骨粗しょう症と骨髄腫についてお話いたします。


 年をとってくると、腰が痛くなったり、体を動かす時に痛みを感じたりすることが多くなってきます。骨が丈夫かどうかを知る方法には骨密度の検査があり、それによって骨粗しょう症と判定されることがあります。骨粗しょう症は老化によって起こるほかに、何らかの病気がもとになって起こる場合があります。その中のひとつに骨髄腫という血液の悪性腫瘍があります。


 骨髄腫は主に50歳以上の人に発症し、人口10万人当たり年間3〜4人発症します。日本では毎年約4000人が発症しているものと推定されています。2005年度の骨髄腫による死亡数は3785人(男性1896人、女性1889人)でした。


 骨髄腫は白血球のなかの形質細胞という血液細胞が悪性化した腫瘍です。形質細胞は、私たちが細菌やウイルスに感染したときに、抗体という免疫グロブリンを作って防御する働きをしています。免疫グロブリンにはIgG, IgA, IgM, IgD, IgEの5種類あります。ところが、骨髄腫では突然変異を起こした形質細胞すなわち骨髄腫細胞が増殖し、一種類の異常な免疫グロブリンを大量に作り出すようになってしまいます。この異常な免疫グロブリンはMタンパクと呼ばれます。Mタンパクは体を守る働きをしないので、感染に対する抵抗力が弱くなります。また、Bence-JonesというMタンパクが作り出されると、腎臓の尿細管が障害され腎臓の働きが悪くなります。骨髄腫細胞は周りの骨を溶かしながら、骨盤、脊椎、肋骨、頭蓋骨、大腿骨などを侵していきます。骨髄腫細胞が増えていくスピードは患者さんによって違っています。ゆっくり分裂し一か所にとどまっていることもありますが、速いスピードで分裂しあちこちに広がり、多くの骨を破壊していくこともあります。一般にガンは早期発見により助かると考えられていますが、骨髄腫では細胞の性格により進み具合や合併症の起こり方がまちまちのようです。


 骨髄腫の症状では、最も多いのが骨の病変による痛みです。脊椎の圧迫骨折による背中の痛みや腰痛が多く、肋骨病変では胸が痛くなることもあります。貧血が進むと疲れやすくなってきます。感染により肺炎や腎盂腎炎などが起こりやすくなります。骨が溶け血液のカルシウムの数値が異常に高くなると、のどの渇きや吐き気などがみられ、意識がもうろうとすることもあります。


 骨髄腫の診断には、血液検査、尿検査、骨髄穿刺、全身の骨のX線撮影などの検査を要します。免疫電気泳動法により血清と尿を調べ、Mタンパクのクラスとタイプを決定します。クラスにはIgGやIgAなどがあり、タイプにはκとλがあります。骨髄穿刺は胸骨や腸骨の骨髄に針を刺し骨髄液を採取する検査です。骨髄標本を顕微鏡で観察し異常な形質細胞が増えていれば診断は確定的です。骨髄腫では異常な形質細胞が10%以上みられます。骨のX線写真では、骨の打ち抜き像や骨折の所見を確認します。骨の病変は初診の患者さんの77%に認められます。MRI検査は脊椎や脊髄病変の評価にすぐれ、FDG/PET検査は全身の腫瘍病変の検索にたいへん優れています。


 骨髄腫の診断が確定した時には、国際診断基準に基づいて分類し、骨髄腫の治療が必要なのか経過観察でよいのかを決定します。高カルシウム血症、腎障害、貧血、骨の病変などがある場合には治療を要します。症状がなく臓器障害のない骨髄腫やMタンパクが認められても骨髄の形質細胞が10%未満の場合には、3〜6か月ごとに経過観察し、骨髄腫の治療をすぐには開始しないのが普通です。しかし、後に症状を伴う骨髄腫に進んでいくことがあるので慎重に経過観察する必要があります。これまで骨髄腫について多くの研究がなされていますが、完全治癒にいたる治療法は確立されていないのが現状です。


 おわりに、骨粗しょう症と判定された時には、もとの病気がないかどうかをよく調べてもらうことが大切です。
 以上、骨粗しょう症と骨髄腫についてお話いたしました。