
| 膵炎(すいえん)について |
2010年5月21日放送
白河厚生総合病院
高須 充子
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皆さんこんにちは。白河厚生病院第一内科の高須です。皆さんは膵臓というのが体のどこにあるかご存じですか? 膵臓はちょうど胃の裏側にあって胃と背骨の間に位置する、横に細長い臓器です。膵臓には2つの大きな役割があります。1つは糖や蛋白や脂肪を分解する酵素を作りだし、膵液となって、食べた物を腸の中で消化する働きです。もう1つは、血糖を調節するインスリンなどのホルモンを作る働きです。インスリンの産生や作用がうまくいかない場合、糖尿病になります。膵臓の病気でも今日は膵炎のお話をします。
急性膵炎という病気は聞いたことがありますか?これはおなかの病気としてはさほど多くはありません。白河厚生病院に入院する胃潰瘍や胆石の患者さんが年間それぞれ約80人くらいとすると、急性膵炎の患者さんは約20人前後です。
急性膵炎というのは、何らかのきっかけで膵臓の酵素が急激に活性化されて過剰に作られ、膵臓の中に漏れ出して、食べ物を消化するように自分の膵臓そのものを溶かしてしまう病気です。通常強い腹痛や背部痛、嘔吐などで発症します。血液検査ではアミラーゼやリパ−ゼといった膵酵素の値が上がり、炎症反応が出ます。膵炎を起こす原因は、日本人の場合アルコール、または胆石が関係していることが多いですが、一方で原因不明のものや自己免疫に関連した膵炎などもあります。
膵炎は、その程度によって経過が大きく違ってきます。軽症の場合は症状も軽く、膵臓は軽い浮腫を起こす程度で、数日間の絶食と点滴で自然に治ります。一方で約3割くらいで重症の場合があり、膵臓の強い浮腫や出血、壊死を起こすなど、炎症も強く、痛みも激しく、時々刻々と病態が変化し、重篤な経過をたどります。特に急性期は強い炎症のためおなかの中がやけどしたようになり高度の脱水を来たします。早期に大量の点滴をしないと急に血圧が下がって全身の血流が悪くなり、膵臓の壊死が進んだり、多臓器不全を起こして死亡することもあります。また意識障害や呼吸困難を起こして人工呼吸器管理が必要になることもあります。また経過中膵臓の壊死したところに細菌感染が起こった場合、おなかの中が腐ったような状態になり、細菌が全身に回って敗血症を来たすなど、治療困難で、非常に重篤で死亡率も高くなります。重症急性膵炎の死亡率は以前は約30%と高率でしたが、近年は早期の集中治療が普及したのもあり10%以下に下がってきています。中には死亡は免れても、合併症などにより、最終的に治って退院できるまでに何カ月もかかる場合もあります。
膵炎の治療は絶食と点滴を基本として、その原因と経過に応じて行われ、胆石が関わっている膵炎ではいずれ胆石の治療が必要であり、自己免疫に関係した膵炎ではステロイド剤の投与が必要になります。
急性膵炎が治った場合、多くは発症前と同じ状態まで回復し社会復帰が可能ですが、重症の約1割で仕事復帰できなくなる例もみられます。また、中には再発を繰り返して慢性膵炎に移行する例もあります。
慢性膵炎とは、繰り返される炎症のために膵臓が線維化を起こして固くなる、肝臓でいうところの肝硬変と似た状態です。慢性膵炎が進むと膵臓の中の膵液の通り道に蛋白栓や石ができることにより膵液がうっ滞し、それがまた膵炎を惹き起こして痛みを繰り返すという悪循環が起こります。場合によっては手術などの処置が必要となることもあります。また膵臓の線維化が進むにつれ、次第に本来の機能が失われていきます。その結果食べ物の消化吸収がうまくいかなくなって栄養不良になったり、インスリンが作られなくなるため糖尿病をきたすこともあります。また、慢性膵炎では、最終的に30%以上の患者さんが膵臓癌や肺癌その他の悪性腫瘍を合併して亡くなることもわかってきました。
日本では近年、アルコール性膵炎の頻度が増えています。アルコール性膵炎では統計的には1日3合以上の飲酒を10年以上続けている場合が多いです。一方それだけ飲んでいる人が皆膵炎になるわけではなく、なるのは実際は数%以下です。なる人とならない人では、何か体質的な違いがあるのではないかと言われていますが、まだよくわかっていません。また慢性化する例の多くはアルコール性であり、殆どが、常習的に酒を飲み、膵炎にかかった後も飲酒を継続している患者さんです。さらに喫煙者では慢性膵炎がより進行しやすいこともわかっています。
1度膵炎になった後、再発や慢性化を防ぐには、まずは禁酒・禁煙が最も重要です。あとは脂肪の多い食事は避け、消化のよい食べ物をとること、そして食べすぎを避けることも大事です。またいかなる原因にせよ、腹痛や背部痛が起きたときはとりあえず早めに病院に行くことをおすすめします。以上、今日はあまり知られていない膵炎のお話をしました。
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