以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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農家の皆さんへ

NSTについて
2010年7月16日放送
高田厚生病院
薬剤科主任 渡部 啓

 多岐にわたる医療ニーズが高まっている現代において、チーム医療を提供することが医療施設の必須条件となってきました。院内各所のそれぞれの仕事をもった専門職が寄り集まって一つの疾患に対応していくことが、患者様の大きなメリットになりますし、効率がよく質の高い医療を提供することにつながります。そこで薬剤師である私が参加しているNSTについてご紹介したいと思います。NSTは栄養サポートチームとも呼ばれ、1970年に米国のシカゴで誕生しました。当時、代謝、栄養学の専門家といわれる医師、栄養士、薬剤師らがシカゴに集結して、専門的な栄養管理チームの必要性を唱えたのが始まりであったといわれています。今の時代に求められる医療は、最先端の医療の提供だけでは成り立ちません。その前に、基本的医療を確立する必要があります。さて、その基本的医療の礎と位置づけられるのが、栄養管理です。栄養管理なしに、患者のQOLの向上はありえません。入院患者様の約40%に栄養不良患者様が存在します。この状態では、患者様の満足度は上がりませんし、病院が早期退院を促しても患者様にその準備ができていないことになります。栄養障害が進みますと、体タン白が減少していきます。骨格筋が減少し、臓器タン白が減少していきます。体タン白が25~30%程度失われますと、生命の維持ができなくなり死にいたります。この状態をNitrogen Deathといいます。
 できるだけ早い時期に体タン白の減少を止めてやることが大切です。すなわち、栄養管理はすべての治療法の基盤といえるでしょう。栄養状態が不良であれば、いかなる治療も無効です。適切な栄養管理は患者予後を改善する可能性をもっており、逆に栄養管理が適切でないと予後を悪くすることもありえるわけです。アメリカにおいても入院患者様に栄養不良が多く、合併症の頻度、死亡率を上げることが認識されるようになりました。これが、ひいては入院日数を延長させ、医療費を増大させることに気づきました。この状態を打破するために、適切な栄養管理を実施する重要性が認識され、それをチーム医療で対応することになり、栄養管理チームが生まれました。重症症例の治療には、栄養管理が不可欠ですし、重症でなくてもすべての患者様は適切な治療を受ける権利があります。医師一人の力では十分な管理ができるとはいえません。本来は、一つの症例ごとに医師、薬剤師、看護師、臨床検査技師、栄養士が一緒になってチームとして取り組むべきです。すなわち、チーム医療が必要が必要です。それを栄養管理の立場から行うのがNSTです。NSTの対象となるのは、栄養管理を必要とするすべての患者様です。静脈栄養や経管栄養ばかりではなく、病院食を含む経口的栄養剤投与も栄養管理の大事な手法です。病院食がおいしくないので、栄養状態が悪くなって免疫力が低下し、結果的に感染症に陥ってしまうことも起こりうるわけです。NSTの役割は、まず、栄養管理が必要かどうかを判定するための栄養評価を行うことです。栄養管理が適切に適用されているかをチエックする必要があります。NSTとしては、その患者様にもっともふさわしい栄養管理を指導し、提言します。適切な栄養管理を実施することで合併症を予防することも可能になります。また問題症例に対する栄養管理上の疑問に答えることも重要な役割です。これらの業務を果たすことで患者様の早期退院にもつながります。病院スタッフにとっては新たな知識の修得にもなり、志気が高まります。NSTの治療目標は十分な経口摂取をいかに早く達成してもらうか、ということです。口で十分な量をおいしく味わって食べられることが、栄養管理の最終目標です。さて今までNSTの内容について大まかに話してまいりましたが、ここでNSTメンバーの役割について述べたいと思います。まず初めに医師の役割として、病状の把握、主治医の治療方針の確認、栄養障害の適応の決定など、看護師の役割として、栄養障害の有無や程度の判定を行う、問題症例の抽出、提示を行う、症例の症状観察、経過観察を行うなど、薬剤師の役割として、病棟ラウンドに参加する、輸液療法の選択、調剤の指導、助言を行う、栄養療法関連製剤の情報提供を行うなど、臨床検査技師の役割として病棟ラウンドに参加する、問題症例の適切な検査、検査内容について助言する、栄養評価に関する検査の情報提供を行うなど、栄養士の役割として入院患者様の栄養管理を行い栄養管理計画書の作成を行う、栄養評価を行う、栄養療法の提言、問題点抽出を行う、栄養療法製剤の情報提供を行うなどがあげられます。奥が深いNSTですが今後も新しい知識の習得と啓発に努めていきたいと思います。