以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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農家の皆さんへ

形成外科について
2011年6月17日放送
福島県立医科大学
形成外科 加藤 基

 県民のみなさん、おはようございます。福島県立医大 形成外科の加藤基と申します。突然ですがみなさん、ご存知でしたか?この4月から塙厚生病院に形成外科の診療が始まりました。肩・腰・膝の整形外科じゃないですよ、形成外科です。カタチに成人のセイの字を続けてケイセイと呼びます。本日は形成外科ってどんな科か、どんな相談をしたらいいか、についてお伝えしようと思います。

 整形外科は肩・腰・膝などで治療されている方も多いと思います。運動にかかわる病気を治します。一方で形成外科は見た目に関する病気を治します。
長年、皮膚のできもの、ほくろ、きずなど、誰かに相談したいけど、どこに行ったらいいかわからないということはありませんか?なくなればいいのにと思うできものや傷でもそんなに気軽に病院にいけないし、でも気になる。形成外科はそんな相談を解決します。

 まずは、いぼ・しみ・ほくろ・かいようなど、体の表面にあって気になるできものは何でもご相談ください。小さな手術できれいに治すこともしますし、クリームなどで治療することもあります。
 先日、50代の男性が診察室に来られました。「背中に3カ月くらい前からできものができたんです。先月からだんだん大きくなってきたから心配になってね。近所の看護婦さんに相談したら、形成外科っていうから来たんです。」
 この方のできものは粉瘤とよばれるもので、中に垢や汗がたまってできる良性のできものでしたが、診察から1週間後に外来で手術をしました。1時間ほどの治療を終えて、その日のうちに家に帰りました。痛みもあまりなく、翌週には糸を抜いて、今では元気に働いています。「悪いものじゃなくてよかったです。痛くもないし、仕事もがんばれています。」

 形成外科はまたけがを治療するところでもあります。切ったばかりの傷や熱湯をかけたばかりのやけどなど新しいけがだけでなく、ケロイド・きずあとなど時間のたったものも、体の表面にあって気になるものは何でもご相談ください。できものの場合と同じように小さな手術できれいに治すこともしますし、クリームなどで治療することもあります。
 先日、小学校高学年の女の子が診察室に来られました。「一週間ほど前に、すねのあたりを湯たんぽでやけどしてしまいました。様子を見ていたんですが、だんだん色が黒くなってきて、気になって病院にきました。相談したら形成外科がいいっていうから来たんです。」
 この方はやけどですが、ちょっと深い層まで傷ができており、クリームで治療することになりました。きれいに洗って、軟膏を塗って、包帯を巻いて。3週間たったころには大分色もよくなり、きれいな傷になってきました。傷跡が全くなくなることはありませんが、以前よりずいぶん目立たない傷になりました。

 他にも、60代の男性が肘のきずあとについて相談に来られました。「二十歳のころに転んでできた傷です。あまり気にせずに過ごしてきたけれどもぴりっとした変な感じが出てきました。手術して治るものでしょうか?」
 この方は古い傷跡の異常な感覚ですが、手術して切り取ってしまうと治ることがほとんどです。手術したあとこの方は「だいぶよくなり、気にならなくなりました」、とおっしゃっています。

 そのほか形成外科は生まれつきの見た目の治療もします。ウチの子には 生まれたときから大きなあざがある、できものができている、耳の形が変だ、指の形がおかしい、などもご相談ください。そういう悩みはなるべく早く解決しておかないと、物心ついた時に悪い精神的影響がでることがあります。
 たとえば、生まれた時から足の指がくっついているお子さんもいます。合趾症といいますが、これも形成外科の守備範囲です。幼稚園などでは意外に裸足になることが多いので、それまでに治しておくといじめにあうこともなくなります。さすがにこうしたお子さんの手術は全身麻酔が必要となることが多いですが、手術したその日からお水などを飲み、2週間くらいで元気に退院することができます。
 ところでみなさん、レーザー治療というものを聞いたことがありますか? レーザーというのは普通の光を発振器という特殊な器械によって増幅して作った人工的な光のことで、これは、ほくろやしみに対してとても有効なことがあります。
 高校生の女の子で顔にできた大きなしみが気になる子がいました。生まれた時からしみはあったのですが、最近になって広がってきたというのです。太田母斑というしみで、夏休みの時間が取れるときにレーザー治療をすることになりました。数回の治療で見違えるほど目立たなくなっていきました。
 これまでお話した病気のほかに、顔面神経麻痺、これは目を吊り上げたり、笑ったりなど表情を作ることができなくなる病気ですが、これとか 顔面の骨の骨折、手や足のリンパ浮腫なども得意分野です。いずれも見た目によくない症状がでるからです。

 ではどうして形成外科で手術されるときれいに治るのでしょうか。それはルーペや顕微鏡、それに繊細な道具を使って手術をすることのほかに、皮膚の切り方や縫い方に専門の技術を使っているからです。どこをどのように切って縫えば創が目立たないかをいつも考えながら手術をしています。創の凹凸にも気を配り、ちょっとでも気に入らないと、せっかく縫った糸をすべて解いてはじめから縫い直すということもよくあります。しかし、だからといって手品とは違うので傷跡が全くなくなることはありませんが、非常に目立ちにくい傷にすることができます。

 以上お話しましたように、形成外科は、見た目に関する悩みを解決することを得意にしています。見た目の善し悪しは本人にとっては大変大きな問題で、他人にはその苦しみがわかりません。治るものをほっておくことは残念なことです。病院で相談したいんだけど、どこにいったらいいかわからない、という方はぜひ一度ご相談ください。
 それでは診療時間のご案内です。
 塙厚生病院 形成外科 毎週火曜日が診察日です。
 外来は 午前9時〜午後1時です。手術は 午後2時〜行っています。
 福島県立医大 形成外科 加藤が塙厚生病院からお伝えしました。それではみなさま、よい一日をお過ごしください。