以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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農家の皆さんへ

認知症について
2016年7月放送
塙厚生病院 心療科
畠山 毅

みなさん、おはようございます。塙厚生病院の心療科の畠山と申します。今日は、お年を重ねた方やその周りで生活をしている家族の方が気になる「認知症」についてと、「認知症の方への対応のポイント」についてお話したいと思います。
 現在我が国で認知症になる方は、お年寄りの方が増えてくるとともに増え続け、全国では65歳以上のお年寄りの方のうち4人に1人が認知症とその予備軍であると推計されています。
 認知症は、年をとったことによる物忘れがひどくなった状態と思われがちですが、脳の細胞が死んでしまったり働きが悪くなることで、普段の生活に支障が出てくることを言います。「物忘れ」は年を重ねたことによる生理的なものですが、「認知症」は病気であり、誰にでも起こりうるものです。その違いとして、自覚がありヒントなどを与えると思い出せるような場合は生理的な物忘れのことが多いですが、認知症では自覚がなくなりヒントを与えても思い出せないと言われています。
 認知症のサインとしては、「話にあれやそれが多くなる」「同じことを何度も言ったり聞いたりする」「よく物を失くす」「服装などがだらしない」「今までできていたことができなくなる」「物事に関心がなくなり投げやりになる」などが挙げられます。進行の具合としては、まずは「時間」がわからなくなり、次に「場所」、最後に「人物」を間違えるようになります。これ以外にも周辺症状といって、「気分が落ち込んでいる」「夜眠らないで言動がおかしい」「あり得ないものが見えている、信じ込んでいる」などの症状も見られることもあります。治療の専門は精神科ですが、受診しづらいという方は、普段高血圧などで診察を受けている医師に相談してみることをお勧めします。認知症は「病気」ですので、病院を受診し、薬などで困った状態を軽減することで、本人も家族も安心できます。受診に当たっては、日頃どのような状態なのか、具体的にメモしていくとより正確な診断に役立ちます。
 ところで、認知症といっても、その人らしさや感情が全て無くなっている訳ではありません。初期の頃には正常な部分と認知症の部分が交じり合っています。関わり方次第で困った状態を和らげることができ、安心して接することができます。今回はそのポイントを確認したいと思います。
 ポイント①は、「良かったという感情を残すように心がける」ということです。理解できない行動にも本人なりの理由があり、怒ったり否定したりするとその時の出来事は忘れても嫌な気持ちだけは残ってしまいます。まずは「そうだね」と受け入れることから始めましょう。その上で本人の言い分を聞いてあげることです。
 そのため、ポイント②として「介護する側の笑顔」が大切になります。認知症が進んでも、相手の表情で感情を読み取る力はさほど低下しないことが分かっています。言葉でコミュニケーションが取れない状態になっても、介護する側の表情は理解できるようです。
 ポイント③は、「本人のペースに合わせて」いくことです。ゆっくり行えばできることも多いので、本人の様子に合わせて急がせず、一つずつゆっくりと分かりやすく伝えることで、できることもあるはずです。そして、できたことが喜びにつながります。
 とは言っても、介護の頑張り過ぎは介護者の健康を損ねることになりかねません。家族や地域の力を利用する、介護サービスを利用するなど、長続きできる方法で対応していきましょう。介護している方同士で愚痴をこぼすだけでも気持ちが楽になり、介護のヒントを得られるかもしれません。
 また、日常の困ったことは、担当のケアマネジャー、地域包括支援センター、かかりつけの医師などに相談してみることをお勧めします。
 それでは、今日もさわやかな1日をお過ごしください。