以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
JA福島厚生連からの最新の情報は、TOPページからご覧ください。



農家の皆さんへ

「認知症」について
2017年12月放送
介護老人保健施設 厚寿苑 リハビリテーション主任技術者
湧井 美貴子

 ラジオをお聞きの皆さん おはようございます。
 南相馬市鹿島区にあります、介護老人保健施設厚寿苑でリハビリを担当しています涌井です。

 今日は、「認知症」についてお話しさせていただきたいと思います。

 皆さんは、「2025年問題」という言葉を聞いた事がありますか?
 これは、団塊の世代が2025年頃までに75歳以上の後期高齢者に達する事により、介護・医療費等社会保障費の急増が懸念される問題です。
 その頃、認知症の高齢者は700万人と予想され、認知症予備軍を加えると65歳以上の3人に1人が認知症当事者や認知症予備軍になると予想されています。

 では、この「認知症」どのような病気かと言いますと、認知機能の障害によって社会生活などが困難になる病気の総称です。
 代表的なものにはアルツハイマー型認知症がありますが、その他にもレビー小体型認知症、脳血管性認知症、前頭側頭葉型認知症などがあります。
 それぞれ、どんな特徴があるかと言いますと、アルツハイマー型認知症は、認知症の中でも一番多いとされて、男性よりも女性に多く見られます。脳の神経細胞が壊れて死んでしまい減っていくために、認知機能に障害が起こると考えられており、徐々に脳全体も萎縮して体の機能も失われていきます。
 症状としては、記憶障害や判断能力の低下、日付が分からなくなったりする見当識障害などがあります。その他、物が無くなった、盗まれたなどの「物盗られ妄想」や徘徊、介護拒否などの行動障害などが出てきます。

 次にレビー小体型認知症ですが、アルツハイマー型認知症の次に多い認知症です。
 アルツハイマー型認知症は女性の発症率が高いのに比べ、レビー小体型認知症は男性の方が多く、女性の約2倍と言われています。特徴としては、初期の段階で物忘れよりも、本格的な幻視が見られる場合が多いです。幻視は、「虫や蛇などが部屋にいる」「知らない人がいる」などの訴えが聞かれることがあり、いるという場所に向かって話しかけていることもあります。また、パーキンソン病と間違われることもあるほど、手が震える、動作が遅くなる、筋肉がこわばる、身体のバランスを取ることが難しくなるなどの症状が出てきます。

 続いて脳血管性認知症です。これは脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの脳の血管の病気によって、脳の細胞に酸素や栄養が送られなくなるため細胞が壊れて、本来細胞が担ってきた機能を失うことにより認知症が起こります。血管の病気を引き起こす原因は動脈硬化です。その動脈硬化の危険因子として、高血圧、糖尿病、心疾患、脂質異常症、喫煙などがあり生活習慣病によって引き起こされるといえます。


 そして前頭側頭葉型認知症ですが、これは脳の前頭葉と側頭葉が萎縮し、血流が低下することによって、引き起こされます。前頭葉は思考や感情の表現、判断をコントロールするため、人格や理性的な行動、社会性に大きく関わります。一方側頭葉は、言葉の理解、聴覚、味覚のほか、記憶や感情を司ります。前頭側頭葉型認知症の初期には物忘れや失語はあまりみられず、人格の変化や非常識な行動などが目立ちます。そのため、精神疾患と診断されてしまう場合があります。10年前後で寝たきり状態になると言われ、筋萎縮や筋力低下がある場合は、その進行が早いと言われています。

 この他にも、若年性認知症、アルコール性認知症、正常圧水頭症、まだら認知症など様々あります。

 誰しも「認知症になりたくない」と思っていますが、残念ながら現時点では「こうすれば認知症にならない」という絶対的な方法はありません。
 しかし、最近の研究から「どうすれば認知症になりにくいか」ということが少しずつ分かってきました。

 脳には、記憶する、時間や場所を認識する、計算する、読み書きをする、言葉を話す、道具を使いこなす、物事の善し悪しを判断する、出来事を理解するなど様々な機能があります。
 その脳が働くには、たくさんのエネルギーが必要です。脳が働いている時には、たくさんの血液が脳に流れ酸素と糖が運ばれます。たくさんの血液が流れることで、脳の機能低下を防ぎ、若々しさを保っていられます。
 反対に脳を働かせていないと、血流も悪くなり脳に酸素や糖が運ばれず、認知機能も低下してしまいます。

 またケガや病気による寝たきりも、認知症の原因にもなるため、適度な運動で筋力の低下を防ぐ事も大切です。
 筋力トレーニングとしては、椅子に座ってつま先や踵の上げ下げ、足上げや膝伸ばし、椅子の背につかまってスクワットなどがあります。
 ウォーキングや水泳などの有酸素運動は、酸素を取り込みながら行うため、血流をよくし、脳の働きを活発にします。

 そして認知症の予防に有効だと言われているものに、デュアルタスクメニューがあります。
 デュアルタスクとは、2つの事を同時に行うことで「ながら動作」のことです。例えば「洗濯物をたたみながらテレビを見る」なども その1つで、どちらかが おろそかになってはいけません。2つの事を同時に行うことで、脳の血流量を上げることができ、認知症の予防につながると言われています。トレーニングメニューとして、歩きながら引き算やしりとりをする、歌リズム体操などがあります。

 最後に、認知症は誰にでもなりうる可能性がある身近なものです。
 最近は、食事や生活習慣、脳のトレーニングと組み合わせた運動や計算ドリルなど、認知症予防の方法が、テレビや雑誌などで紹介されています。
 自分に合ったものを上手に取り入れて、認知症を予防していきましょう。