以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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農家の皆さんへ

「手荒れと薬について」
2020年7月放送
塙厚生病院
薬剤科 岡 慧

 こんにちは。塙厚生病院 薬剤科の岡 慧と申します。今日は手荒れと薬についてお話させていただきます。

 手荒れとは、刺激のある物質や、アレルギーの原因になる物質が手に触れることによって、かゆみ、ひりひり感を伴う湿疹が出来てしまう病気です。手湿疹とも呼ばれます。普段の生活や職業によっては、手が日常的に刺激に晒されて、長期間の手荒れが悩みとなります。農家の皆さんにとっては、元々触れるとアレルギーになりやすい植物や、植物を育てるのに必要な農薬も原因となる可能性があります。また最近では、新型コロナウイルス感染症の予防のために、手指消毒剤を用いる事が日常となりました。手指消毒剤を適切に用いた場合、手荒れしやすくなる側面があります。

 手荒れは様々な湿疹の形があります。手のひら表面の角質が鱗のようにぽろぽろと落ちてまれに亀裂を伴うもの。指先や指のお腹が刺激を受けて指紋が見られなくなったり、悪化すると亀裂を伴うもの。手の甲などに痒みが強い、丸い形の湿疹が見られるもの。痒みを伴う水ぶくれのようなものが沢山できるもの。手全体の乾燥と亀裂が見られるものがあります。手荒れの原因は、はっきりしているものもあれば、不明なものもあります。手荒れの原因を見つけるには自己判断では難しく、医師による検査や診断が必要です。長期間の悩みになる前に皮膚科に受診し、適切な治療を受けてください。

 次に、手荒れの対策と、手荒れに用いる薬についてお話させていただきます。皮膚には皮脂と呼ばれる表面の油。すなわち油分と、皮膚の中で角質どうしを繋ぎ止める油分があり、必要な水分を蒸発させないようにしたり、外の刺激から身を守るバリアを作っています。手荒れをしやすい肌は、皮膚に必要な油分や水分が奪われているために、皮膚のバリア機能が低下していることがあります。日常の生活でよく使う食器用洗剤は長い時間手に触れていると手に必要な油分を奪い、バリアを崩します。そのため洗剤の使用は短時間にとどめ、長い時間手に触れそうな場合はゴム製の手袋をつけて刺激を避けることをお勧めします。ゴム製品にアレルギーのある方は、手袋の素材に注意することが必要です。

 手洗いは手全体に洗い残しがないように行うことが大切ですが、適切な方法で繰り返し行うと、手に必要な油分を奪います。お風呂での身体洗いも同じです。また手指消毒剤に含まれるアルコールは、バイ菌やウイルスの消毒に大事ですが、同時に必要な手の油分を奪う側面があります。手洗いお風呂後に油分を補うために保湿剤を使うことで、手荒れを予防することができます。手指消毒剤の使用後も同じく、保湿剤を使うことは乾燥に効果的です。

 また、手洗いやお風呂上がり、食器洗いの後などに手が乾燥している場合、指先にささくれが出来ることがあります。これは乾燥により、皮膚の1番上の表皮が、下の皮膚と繋がっていられずに離れてしまって出来るものです。ちぎったり、かきむしると、ばい菌が入って化膿しやすいため、見つけたら爪切りで切ることも、手荒れ予防に重要です。

 保湿剤には、皮膚に刺激の少ないワセリン、その他にも多くの保湿クリームが市販でも販売されています。どの保湿剤も、手洗い後などの油分が奪われたタイミングで使うことが効果的です。ワセリンは刺激が少ないのと、皮膚の表面を保護する効果が高いのでお勧めします。

 保湿クリームも効果的ですが、もともと手荒れのある方で、手荒れの種類によってはクリームの成分が刺激になることがあります。その場合、皮膚科に受診し、使っているクリームをお持ちになって頂き、医師に相談することをお勧めします。

 市販のステロイド剤の使用を考えている方は、医師や薬剤師によくご相談ください。

 手荒れは日常的に誰でも起こりうる病気ですが、職業柄どうしても避けられない側面があったり、時に日常生活に支障が起こり、痛み痒みにつらい思いをする病気でもあります。避けられる刺激からは離れて、適切な薬を適切なタイミングで使って、長期間改善されない場合はためらわずに受診する事が大切です。