溶連菌感染症
2018年9月
福島県農協会館診療所
所長 重富 秀一
 溶連菌感染症は小児科領域に多い病気で、子供さんやお孫さんをお持ちの方は耳にしたことがあるのではないかと思います。溶連菌(正式名称は溶血性連鎖球菌)は細菌の一種で、A群、B群、C群の三種類があります。溶連菌感染症の90%以上はA群溶連菌によるものです。風邪(普通感冒)の原因はほとんどがウイルスですが、溶連菌が咽喉頭部に増殖しても風邪症状を引き起こします(表)。ウイルスによる風邪は自然に軽快しますが、溶連菌は細菌ですので、抗生物質を投与しないと治りません(ペニシリン系が有効、ペニシリンアレルギーがある人ではエリスロマイシンが適応)。溶連菌感染症は、飛沫感染あるいは接触感染で広がるため、学校で流行した場合に出席を停止することができる第三種の感染症に指定されています。医師が感染の恐れがないと認めるまで出席停止と定められています。溶連菌感染症と診断されると家族の皆さんは大変心配されるのですが、抗生物質治療開始時間24時間を経て全身状態が良ければ登校可能であり、登校停止期間は長くても発症当日と翌日の二日間程度です。肺炎や猩紅熱などのように重症化しなければ、抗生物質を服用後2~3日で熱は下がりますが抗生物質はその後もしばらく(5~10日間)服用しなければなりません。さて、溶連菌はいったいはどこに存在しているのでしょう。実は、溶連菌は健康な私たち咽喉や皮膚に住みついているのです。喉に溶連菌を持っている子供で元気な子供は大勢います(3割とも言われる)。喉に溶連菌がいても、症状がない人を保菌者といい、菌が一定数以上に増殖して発熱や咽喉頭痛が出現した人を感染者と言います。軽い風邪症状で熱がない子供の咽頭部から溶連菌が検出されても真の溶連菌感染症ではないこともあります。溶連菌感染症として治療しなければならないのは、溶連菌が何かのきっかけで増殖してさまざまな症状を起こした場合です。一般的には、2~5日の潜伏期を経て、38℃以上の発熱と全身倦怠感、のどの痛みが出現します。咽喉頭部が発赤し、扁桃腺や頚部リンパ腺の腫張を認めるようになります。舌にイチゴのようなぶつぶつが出来たり(イチゴ舌)、全身の皮膚に発疹が出現したりします。まれですが、回復期に腎炎を合併することがあります(溶連菌感染後腎炎)。溶連菌感染症を適切に治療しても腎炎の発症を予防することは難しく、なぜ腎炎が発症するかも解明されていません。溶連菌感染後腎炎は3歳未満に発症することはまれで、大部分は小学生以上ですが、腎炎を発症しても大部分は安静と食事療法で回復します。溶連菌感染症は12月から7月上旬にかけて流行するといわれていますが、一年を通じて見られる病気なので、常に注意が必要です(図)。溶連菌感染症の予防には、のどや皮膚に常在している溶連菌を過剰に増殖させないための歯磨き、外出後のうがい・手洗い・皮膚の清潔に心がけ、規則正しい生活をして体力と免疫力を向上させることが重要です。

表 A群溶連菌の陽性群と陰性群の症状比較(咽頭扁桃ぬぐい液培養検査)
國吉保孝他:日本プライマリーケア学会連動学雑誌(2012年)

図 主な小児感染症の月別患者数(2015年)(島根県感染症発生動向年より)

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