「風疹」と「先天性風疹症候群」
2018年11月
福島県農協会館診療所
所長 重富 秀一
 今年は例年になく「風疹」が流行っています。2017年は風疹に罹った人が93人だそうですが、今年は10月の時点で1000人を超えました。我が国では、MRワクチン(麻疹と風疹の混合ワクチン)の予防接種を1歳児と小学入学前1年間の2回受けることになっています。ワクチンを接種して獲得した免疫は一生続くので、風疹が流行っても感染することはありませんが、風疹の感染力は大きいので、風疹ウイルスが体内に入ると(飛沫感染)免疫力のない人の間に感染が広がります。定期の予防接種が行われていなかった頃は、5年ごとに子供を中心に大流行したそうですが、定期の予防接種が実施されるようになった結果、1994年以降の大流行は起こっていません。しかし、2002年~2004年と2011年~2013年の2回、局所的な流行が起こっています。このとき風疹に罹ったのは免疫力のない成人男性が中心だったそうです。さて、わが国では、2020年までに風疹を排除するとの目標を定めています。いったい、風疹とはどんな病気で、なぜ予防接種が必要なのでしょうか。ご承知の方も多いと思いますが、風疹は三日はしか(麻疹)とも呼ばれます。麻疹とは全く異なる病気ですが、麻疹と同じような発疹が出る病気なのでこのような名前がついたのだと思います。風疹ウイルスによって起こる急性の感染症で、春先から初夏に多く見られます。感染してから症状が出るまでの潜伏期間は2~3週間で、発熱、リンパ節腫脹、発疹が主な症状です。感染しても症状がでないこともあります(15~30%)。風疹ウイルスの特効薬はありませんので、解熱剤などの対症療法を行います。まれに、血小板減少性紫斑病、脳炎、関節痛などの重篤な症状のために入院治療が必要となることもありますが、一般に経過は良好で、数日で自然に治癒します。発疹が出る1週間前、発現してから1週間(約2週間)は感染力がありますのでこの期間はほかの人にうつさないように注意が必要です(図1)。このように風疹自体の症状はあまり重くないのですが、妊娠している女性が風疹に罹るとお腹の赤ちゃんにも感染は波及します。風疹に感染した胎児は、難聴、心臓病(動脈管開存症、肺動脈弁狭窄症など)、眼疾患(白内障、緑内障、網膜症など)、精神や身体の発育遅などの障害をもって生まれる可能性が高くなります。この障害を「先天性風疹症候群」といいます。妊娠12週までに感染すると25~90%に先天性風疹症候群が認められるとの報告があります。妊娠21週を過ぎると発症の可能性は著しく低下するそうです。予防接種が普及したことにより成人の風疹抗体の保有率は80%以上になりましたが、まだ完璧ではありません。特に35歳から55歳までの成人男性の保有率が低くなっています(図2)。風疹の感染者が成人男性に多いのはこのような理由によります。女性の風疹抗体保有率はすべての年代で90%を越えていますが、100%ではありません。1962年から1978年に生まれた男性の約20%、1979年から1989年約10%は風疹抗体を持っていません(図3)。この年代の男性が風疹に感染し、ウイルスをばら撒くことで風疹抗体を持っていない妊娠女性が風疹に感染することが大問題なのです。2002年~2004年と2011年~2013年に風疹が大流行したあと、先天性風疹症候群を持った赤ちゃんが多く生まれました。成人男性の間で流行した風疹のために、赤ちゃんに先天異常が起ったのです。風疹抗体を持っているかどうかは血液検査で判定できます。これから生まれてくる赤ちゃんのために、風疹抗体が陰性の人は年齢や性別を問わず予防接種を受けましょう。ただし、妊娠している女性は予防接種ができません。風疹抗体を持っている人が予防接種を受けても特に問題はないといわれていますが事前に医療機関で相談するのが良いでしょう。


図1 風疹ウイルスに感染してからの経過


図2 各年代別の風疹抗体保有状況


図3 生まれた年度別の抗体保有率

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